就活不正:「Webテスト」露骨なカンニング、友人間で拡散する解答集「それでも受かりたい」学生の本音

就活をイメージした写真

2026年に大学を卒業する学生(現大学3年生)の就職活動が本格化している。

本選考に向けた会社説明会やオープンカンパニーが増え、企業によってはエントリーシートの提出も始まっている。

現在都内の大学に通う3年生の私も、就活の真っ最中だ。

ただ、その中で、どうしても憤りを感じていることがある。

インターンにしろ、本選考にしろ、選考が進む過程でどこかのタイミングで受けることになるSPIや玉手箱などの「Webテスト」。

自宅などでも受けられるこのテストの答えが、大学生の間で出回っているのだ。

Webテストにおける不正行為は、替玉受検で逮捕者が出るなど、これまでも問題視されてきた。

ただ、調べてみるとここ数年で、「解答集」というより露骨なカンニング手法が、就活生の間で一定程度広まっている現状があることが分かってきた。

「参考書は使ってないし、勉強もしていない」就活中に出会ったある学生はこう語る一方で、いわゆる難関とされる某金融大手のインターンシップのWebテストを難なく通過した。

当然、「解答集」を活用したという。

このような環境の中で行われるWebテストに、果たしてどこまで意味があるのか。

企業は本当にこの仕組みで「いい人材」を採用できているのだろうか。

学生たちに話を聞くと、就活の歪んだ現実が見えてきた。

グーグルのスプレッドシート上に並ぶ「玉手箱」などをはじめとしたWebテストの名称──。

画面には各Webテストを受ける際のドメインが記載されていた。

スプレッドシートの各シートを開くと、それぞれのWebテストで出てくる問題文の冒頭の文章と、正答とされる選択肢が記載されていた。

就活生は、自宅などでWebテストを受ける際に、このシートを見ながら、限られた時間の中で解答を埋めていく……。

まごうことなき「カンニング行為」だ。

ただ、さまざまな大学の学生に話を聞いていくと、Webテストの解答集の存在は一部では「当たり前」のように捉えられていた。

多くは同世代の就活仲間や部活・サークルの先輩など、人づてに回答を手に入れていた。

就活の年次が変わればテスト内容も変わってしまいそうだが、グーグルのスプレッドシートなどで適宜最新版に更新されながら、「代々秘伝のタレ」のように受け継がれているものもあるという。

また話を聞いていくと、このような解答集の受け渡しには、金銭やそれに近い情報の授受が発生することもある。

例えば学生間でランチなどをおごるような軽いやりとりから、解答集を受け取る対価として、XなどのSNSで就活情報の発信やサロンを運営している個人アカウントや、企業・NPOなどが運営するコミュニティへの入会が求められるケースもあった。

都内の有名私立大学に通うアツシさんは、大学3年時に所属していた部活の先輩からWebテストの存在を教えてもらい、「渡す代わりに、奢って」と持ちかけられたという。

「だって、みんな使ってるし」(アツシさん)と、解答集を使うことがカンニング行為にあたることに対して、特に罪悪感はないという。

別の都内有名私立大学に通うリコさんも、ゼミの先輩からWebテストの解答集をもらい、サマーインターン以降、ESや面接対策などに時間を割くためにも、解答集をフル活用していたという。

「そもそもテストをWebでやっている時点で、採用側もある程度の不正行為を認知していると思うし、本来の能力を見ることを重視しているようには思えない。だから、悪いことをしているとは全く思わなかった」

そもそも就活では、インターンや本選考のESや面接に数十社応募することはざらだ。

志望業界や企業が絞りきれていない状況では、業界研究や選考の書類づくり、さらにWebテスト対策……とやることは山積みだ。

そこに「解答集」という甘い罠があると、思わず手が伸びてしまうということなのだろう。

実際、地方にある私立大学に通うハルトさんは、業界が絞れず、ガクチカや学歴に不安が残るまま就活シーズンが始まったという。

Webテストの対策も一切しておらず、「やらないといけないけど、 ESも面接もあって時間が限られてる」と話す。

ハルトさん自身、3年生だった2024年の夏に申し込んだサマーインターンでは軒並み不採用に。

Webテストの通過率も低かった。

解答集の存在は知らなかったというが、「全然知らなかった。めちゃめちゃ欲しい」と切実だ。

本格的に活動を始めてからガクチカを新しく作ることは難しい。

ただ、Webテストは解答集さえあれば確かに簡単にクリアできる。

不正行為であることについて負い目やリスクを感じないのか。

「ばれたらばれたでそのとき考える」(ハルトさん)「いつかボロが出る」

当然ながら、すべての学生が解答集を使っているわけではない。

都内の私立大学に通うユウコさんは大学3年の秋頃、他大学に通う友人から解答集の存在を知った。

ただ、結局手にすることはなかった。

ユウコさんは、「本当に行きたい企業なら本気で勉強する」と語る。

「使うことがダメだと思わないし、使っている人がいても全然気にしないけど、適性検査とか面接でいつかボロ出ると思っていたし、不正をしてまで大手に行きたいとは思わなかった」

ユウコさん自身、仮に不正行為をしてしまうと、罪悪感に囚われて本来の実力が発揮できないタイプだという。

ただ、不正をしている学生と真面目に受検している学生を見極めるのはそう簡単ではない。

中には不正行為と疑われないように、わざと時間をかけて問題を解いたり、あえて間違った回答をしたりする学生もいる。

ネット上には、企業に不正がばれて内定を取り消されたという声も耳にするが、企業が認識できている以上に、就活の現場では不正行為がまかり通っているのかもしれない。

参照元∶Yahoo!ニュース