医師が出てこない、初診なのに1か月分の向精神薬処方も ずさんなオンライン診療相次ぎ発覚

オンライン診療をイメージした写真

スマホなどを介したオンライン診療でトラブルが相次いでいる。

医師が診察しなかったり、初診で禁じられた向精神薬を処方したりと、医師法や国の指針に抵触しかねないケースも目立つ。

放置すれば重大事故につながりかねず、厚生労働省は規制強化のため法改正に乗り出す。

精神面に不調を感じた関東地方の50歳代の女性は今冬、東京都内のクリニックのオンライン診療を予約した。

LINEで薬の服用歴などの簡単な質問に答えると、スマホが鳴った。

看護師を名乗る女性だった。

よく眠れないことを伝えると、睡眠薬の服用を勧められた。

まずは数日分試したかったが、「1か月分からしかない」と言われた。

届いた薬を口にすると、めまいがしたため、怖くなって服用をやめた。

「医師は出てこず、副作用の説明もなかった」と憤る。

医師法は、医師が診察せずに薬を処方することを禁止。

厚労省が2018年に策定したオンライン診療の指針では、基礎疾患の情報が未把握の患者に対しては、8日分以上の薬の処方を禁じている。

女性が保健所に通報したところ、「同じ業者について、複数の苦情が寄せられている」と説明されたという。

読売新聞はクリニックの運営業者に医師法に抵触する恐れがあることなどについて質問状を送ったが、回答はなかった。

緊急避妊薬(アフターピル)を巡っても、不適切な事例が確認された。

女子中学生は昨春、別の都内のクリニックのオンライン診療で購入を申請。

LINEで手続きの流れや頭痛などの副作用を説明された。

その後、電話をしてきた女性は職業や名前を告げず、希望する薬の名称を聞くだけだったという。

少女の父親は「未成年者に対しては、より丁寧な説明をすべきで、問題だ」と話す。

患者の通院の負担が減るオンライン診療は離島などで導入され、18年度に公的医療保険の適用対象になった。

利便性が高い一方、触診や聴診ができないといった制約があり、対象は対面診療を一定期間受けている患者に限られた。

この条件が緩和されたのがコロナ禍だった。

待合室での感染リスクが低減されるなどの利点があり、特例的に初診から認められた。

22年以降は恒久化され、24年10月時点で、全医療機関の1割にあたる1万2507か所が実施を届け出た。

厚労省の指針では、初診から認められるのは原則として、受診歴のあるかかりつけ医。

それ以外でも、健康診断結果などで患者の状態が把握できれば認めており、医師と患者双方での身分確認を求めている。

だが、守られないケースが続出している。

厚労省が電話とオンラインでの診療について調べたところ、初診時に基礎疾患の情報が未把握なのに8日以上の薬を処方したり、向精神薬を出したりといった指針違反の恐れがある事例が、23年1~3月だけで1740件発覚した。

全国の消費生活センターにも23年度、ダイエット目的の事例を中心に、オンライン診療に関して258件の相談が寄せられ、21年度の約5倍に増えた。

同省幹部は「病院側が迅速さを重視し、対応がずさんになりがちだ。基礎疾患の把握や副作用のリスク説明を適切にしないと、重大な医療事故を引き起こしかねない」と危惧する。

参照元∶Yahoo!ニュース