米株へのマネー流入止まらず、トランプ関税は謎のまま 慎重さ欠如か

トランプ米大統領が先月に就任し、地政学上の同盟国かライバル国を問わず全面的な関税を賦課すると表明して以来、ウォール街は同氏がそれを「実行するのか、しないのか」推測してきた。
株式市場は当初、警戒一色で反応したが、ムードは変わりつつある。
発動の先送りや除外検討といった動きに好戦的な発言が織り交ぜられるなど、政権の政策がますます混迷しているためだ。
投資家は今のところ、ノイズを無視して株式を購入している。
トランプ氏が3月発効の鉄鋼とアルミニウムに対する25%関税、および4月に発効すると予想される多数の貿易相手国への相互関税を発表したことで、世界的な貿易戦争のリスクは依然として危険なほど現実味を帯びている。
しかし株価指数は上昇を続け、S&P500種株価指数は先週、最高値に接近して終了した。
この上昇に拍車をかけている買い手が、トランプ氏の動向を適切に判断しているのか、あるいは危険なほどに慎重さを忘れているのかが今問われている。
モルガン・スタンレーのポートフォリオマネジャー、アンドルー・スリモン氏は「関税が思ったほど懲罰的なものにはならなそうだと投資家は認識しており、予想と比べて良いニュースだ」と述べた。
それでも市場センチメントの弱さは、関税計画のリスクを投資家がなお警戒していることを示唆するとスリモン氏は指摘。
また最近の株式への資金フローの大部分は、ショックにより敏感に反応する可能性がある買い手によるものだとし、ニュースへの市場の感応度が高まっているとの見方を示した。
貿易政策の不確実性を示す指数は、同様の貿易戦争が勃発していた2019年以来の水準に急騰している。
LPLファイナンシャルのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、アダム・ターンキスト氏は「この不確実性の指数と市場のインプライドボラティリティーは通常、連動して動く。この関係はボラティリティーが上昇し得ることを示唆する」と述べた。
ボラティリティーは中期的に上昇する可能性があるが、投資家は今のところそれに備えていない。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドなどの大口投機筋はシカゴ・オプション取引所(Cboe)のボラティリティー指数(VIX)に連動する先物を16週連続で売り越した。
こうした投資家のネットショートポジションは現在、5万9000枚付近で推移している。
これは昨年7月中旬の円キャリートレード解消時に見られた水準だ。
VIXはその翌月に新型コロナ禍以来の水準まで急上昇し、S&P500種は急落。
低ボラティリティーが続くと予想していた株式投資家が不意を突かれる格好となった。
「不確実性とボラティリティーが高いとき、相場は最高値を更新し続ける展開にはならない」とターンキスト氏は付け加えた。
言い換えれば、S&P500種が今年12%上昇するというストラテジストの予想は実現が疑わしくなる。
GW&Kインベストメント・マネジメントのグローバルストラテジスト、ビル・スターリング氏は「関税の問題は、その規模や範囲、順序がまだ宙に浮いたままだ。『未知数だということが分かっている』カテゴリーに入るが、金融市場にとって最大級のリスク要因だ」と指摘。
「ノイズが減り、政策が明確化してくると、歓迎されるだろう」と語った。
参照元∶Yahoo!ニュース