世界の大都市でネズミが増加、最大の原因は温暖化 米研究

世界中の大都市でネズミの数が増えているという研究結果がこのほど発表された。
研究チームは主な原因として、気候変動の影響を指摘している。
2022年1月、米首都ワシントン米リッチモンド大学のジョナサン・リチャードソン教授(生物学)のチームは、ネズミに関して長期的な統計がある米国内の13都市に加え、トロント(カナダ)、東京、アムステルダム(オランダ)の3都市について、それぞれネズミの目撃、捕獲、点検報告をもとに、平均12年にわたる集計結果をまとめた。
この結果は1月31日の科学誌サイエンス・アドバンシスに発表された。
それによると、調査対象とした16都市のうち11都市で、ネズミの数が大幅な増える傾向にあることが分かった。
特に増加が顕著だったのは米首都ワシントン、サンフランシスコ、トロント、ニューヨーク、アムステルダムの各都市。
一方、ネズミが減っていたのは米ニューオーリンズ(ルイジアナ州)と米ルイビル(ケンタッキー州)、東京の3都市のみだった。
ネズミが増えた原因としては、人口の密集や都市部の植物の少なさも一因としているが、最大の原因として平均気温の上昇を挙げている。
小型哺乳類のネズミは寒ければ活動が制限される。
しかし特に冬場の気温が上がったことで、外に出て餌をあさる期間が長くなり、年間を通じた繁殖期間も長くなった。
温暖化の影響で生育期も長くなってネズミの餌が増え、ネズミが隠れられる植生も増えた。
「温暖化に伴って食べ物やごみのにおいはさらに遠くまで届く」とネズミに詳しい専門家のマイケル・パーソンズ氏(今回の研究にはかかわっていない)は解説する。
ネズミの繁殖は都市に大きな問題を引き起こす。
ネズミはインフラを損傷させ、食中毒の原因となり、配線をかじって火災を発生させることもある。
今回の研究では、米国のネズミによる損害額を年間270億ドル(約4兆円)と推計している。
害獣に詳しいコーネル大学のマット・フライ氏(今回の研究にはかかわっていない)によれば、ネズミは健康被害を引き起こすこともある。
ネズミは人に影響を及ぼす50以上の病原菌と関係しており、糞尿(ふんにょう)や唾液(だえき)、寄生虫などを通じて人に感染すれば、レプトスピラ症のような重い感染症の原因となることもある。
ネズミが周辺で暮らす人の心の健康に大きな影響を及ぼすことも実証されつつあるという。
今回の研究では、特に首都ワシントンのネズミの多さが際立っており、ニューヨーク市に比べると1.5倍のペースでネズミが増えていた。
首都では固いプラスチックのごみ箱にも、ネズミにかじられた穴が開いているという。
首都の気温は昨年、観測史上最高を記録した。
リチャードソン氏は、今回の調査でネズミが減っていた3都市から教訓を学ぶことができると述べ、そうした都市では自治体がネズミを寄せ付けない方法を住民に周知したり、対策に予算を拠出したりしたことが奏功したと指摘する。
殺鼠(さっそ)剤を使った駆除については「既に繁殖している状況に対応しているにすぎない」として脱却を促し、生ごみやがれきの山などにネズミを寄せ付けない対策に力を入れる必要があるとした。
その上で、温暖化が進む中、ネズミの問題に対応できなれば、事態は一層悪化すると警鐘を鳴らしている。
参照元∶Yahoo!ニュース