グリ下少女の性被害相次ぐ 「家に居場所ない」狙い撃ち
大阪・道頓堀のグリコ看板下の遊歩道「グリ下」に集まる少女の性被害が相次いでいる。
大阪府警が対策を強化したことで容疑者の逮捕・起訴が続き、家に居場所がない少女を大人が狙い撃ちしている実態が表面化した。国や自治体は若者のシェルターづくりに乗り出したが、課題は多い。
16歳の少女に声をかけ、路上売春をさせたとして無職の男(29)が昨年10月、売春防止法違反(管理売春)で起訴された。
府警などによると、少女は家出中でグリ下に出入り。
ミナミの街で男から「16歳でもいける仕事がある」と声をかけられた。
大阪市内の雑居ビルで暮らしながら1か月間路上に立ち、1日3人ほどに売春。
男から「逃げたらグリ下のやつ(仲間)をたたきに行くぞ」と脅されていたという。
男に「家賃」などとして売り上げの6割にあたる約70万円を渡したとみられる。
少女は府警に「家出中でお金がなかった。(男から)住まわせてくれると言われたのでついていった」と話したという。
昨年1~2月には、「グリ下の帝王」と呼ばれた男(32)が不同意性交などの疑いで逮捕された。
市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)の傾向がある女子中学生らに睡眠導入剤を渡したり、わいせつ行為をしたりしており、同11月、大阪地裁で懲役7年の実刑判決を受けた。
同5月に女子中学生への不同意わいせつ容疑などで逮捕された元高校講師の男(26)はSNSで「#グリ下 界隈(かいわい)」と検索し、少女を物色していたという。
グリ下は2021年頃、「仲間に出会える場」としてSNSで話題になった。
府警は23年3月、グリ下に防犯カメラを2台設置。
グリ下周辺の未成年者に集中的に声かけする「特別補導」も実施しており、21年の2回から昨年は10回に増やした。
声かけや補導が容疑者の逮捕につながったケースもあるという。
居場所のない若者にグリ下近くで「D×P」が開放しているスペース
NPO法人「D×P」(大阪市)は23年6月から週2回、グリ下近くのビル一室を若者の居場所として開放している。
昨年7~10月に部屋を利用した200人に実施したアンケート調査では、「直近1か月、どこで寝泊まりしたか」との質問(複数回答)に対し、15%が「友人の家」、8%が「不定」と回答。
「育った家庭・施設を自分の居場所と感じるか」との問いには46%が「感じない」と答えた。
国や自治体も対策を模索している。
こども家庭庁は24年度、少年少女らが寝泊まりできるシェルターの運営をサポートする制度を導入。
都道府県や政令市、その委託先業者が運営するシェルター1か所あたり、年約1700万~約4000万円を補助する。
だが、補助実績はゼロ。
同庁の担当者は「各自治体は親権との兼ね合いで、運営に乗り出しにくいのかもしれない」とみる。
同庁は24年度中に施設の運営に関する指針を公表し、親権者への対応方法などを具体的に記載する。
大阪市は近く、市が運営する生活困窮者向けの個室のシェルターを2室から7室に増やし、グリ下の若者らも宿泊できるようにする。
グリ下と同様の問題が起きている東京・歌舞伎町の「トー横」近くでは、東京都が昨年5月に相談施設を開設したが、施設の利用者同士で、売春の客を紹介しようとするなどのトラブルが起きた。
関西大の山縣文治教授(子ども家庭福祉学)は「グリ下は、若者を狙う大人にとって都合のいい場所になってしまっている。
薬物事件や闇バイトに巻き込まれるリスクもある」と指摘。
「対応が画一的になりがちな行政より、民間団体の方が居場所を提供しやすい。国や自治体は民間団体への支援を充実させていく必要がある」と語る。
参照元:Yahoo!ニュース