ネットカジノ摘発急増、昨年の2.7倍 主流は個人のスマホ利用で国内利用者300万人超えか

ネットカジノをイメージした写真

海外のオンラインカジノに接続して賭博をしたとして、全国の警察が今年1~11月、昨年の約2.7倍となる143人(暫定値)を摘発していたことが、警察庁への取材でわかった。

賭け金の決済口座の解析で、客の特定が進んだかたちだが、国内の利用者は300万人超との推計もある。

借金を抱えて「闇バイト」に手を出す若者もおり、専門家はアクセス規制の検討が必要と指摘する。

警察庁によると、オンラインカジノ客の摘発は2019年の62人が最も多く、近年は50人程度で推移してきたが、今年は11月末で143人と、昨年(53人)の約2.7倍に達した。

個人がスマートフォンで行うのが主流で、今年の摘発は「無店舗型」が約9割に上る。

国際カジノ研究所(東京)が今年8~9月、国内の男女6000人を対象に行った調査では、1年以内にオンラインカジノで賭けたことがある人は2.8%で、約346万人が参加していると推計された。

海外のカジノサイトは乱立しており、「安心・安全」「24時間日本語サポート」などと紹介しているが、海外では合法でも日本国内から賭ければ違法だ。

警察はカジノ客の摘発を進めている。

先月には、中米キュラソーの企業が運営するサイトでスポーツ賭博などをした疑いで、警視庁が客10人を単純賭博容疑で東京地検に書類送検した。

10人は20~60歳代。

主婦や会社役員、公認会計士、消防職員と様々で、調べに「ストレス解消のため」「稼げると聞いた」などと説明。

収支は全員がマイナスで、3000万円の損失を出した人もいたという。

客の特定が進む背景には、「決済代行業者」の摘発がある。

業者はサイト運営者の代わりに円や暗号資産をカジノで使うポイントに交換したり、出金したりして手数料を得ている。

こうした代行業務が賭博の「ほう助」に当たるとして、警視庁は昨年9月、業者2人を逮捕。

業者の関連口座には、5か月間で延べ約4万2000人の客から約200億円が振り込まれていたことを確認した。

その後、賭博用のポイント購入に使われた暗号資産口座を専用ツールで解析し、利用者約130人を特定、大規模な摘発につなげた。

千葉県警や兵庫県警も今年、決済代行業者とその客を摘発しており、警察幹部は、「海外だから、暗号資産だから逃げられると考えるのは大間違い」と語る。

国立病院機構久里浜医療センター(神奈川)の昨年度の調査では、コロナ禍前より、インターネットでのギャンブルの利用が増えたとの回答は、依存が疑われる人で19.9%に上った。

政府も対策を進める。

9月に関係省庁の連絡会議を設置し、依存症対策や賭博行為の阻止に向けた課題の整理を行っている。

警察庁はサイトのアクセス数や利用者層などの実態調査を進めており、結果を年度内に取りまとめる予定だ。

カジノ問題に詳しい静岡大の鳥畑与一名誉教授(金融論)は、「ゲーム感覚ででき、賭けのテンポが速いオンラインカジノは依存症を誘発しやすい。海外からは規制の緩い日本市場が狙われており、政府はサイトへの接続を防ぐ『ブロッキング』も含め、対策を急ぐ必要がある」と指摘する。

公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京)には、近年「オンラインカジノで借金した息子が、闇バイトに応募した」といった相談が寄せられている。オンラインカジノで負けが込み、特殊詐欺の被害金の「受け子」をしていた若者もいたという。

同会に昨年相談した人のうち、「オンラインカジノもやっている」とした人が犯罪に関与していた割合は約36%で、していない人に比べて約10ポイント高かった。

同会の田中紀子代表は、「闇バイトなどの犯罪に手を染める前に、立ち止まって相談してほしい」と話す。

一方、闇バイトで売買される口座が、オンラインカジノの決済に使われている実態もある。

愛知県警などが今年摘発した「リバトングループ」の幹部らは、SNSで「毎月3万円が2年間入る決済代行案件」などと募集。

カジノ用の口座開設を指示していたという。

参照元:Yahoo!ニュース