子宮頸がんワクチン接種記録、10市区が廃棄 自治体で保存期間に差

子宮頸(けい)がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが公費で受けられる定期接種になった2013年4月以降、全国の少なくとも10市区が接種記録を廃棄していたことが毎日新聞の調査で判明した。
法定の保存期間(5年間)を過ぎた後の廃棄だったが、5年経過後も保存を続けている自治体は多く、自治体間で保存期間に差が生じている状況が浮かび上がった。
HPVワクチンを巡っては、副反応への懸念から接種を逃した女性が多い世代(1997~07年度生まれの10代後半~20代後半)を対象とするキャッチアップ接種のなかで、規定回数を超えてワクチンを打つ「過剰接種」が全国12市区であったことも毎日新聞の調査で明らかになっている。
記録廃棄で過去の接種歴が分からなかったことが原因のケースもあった。
毎日新聞は7~9月、東京23区、政令指定都市、全国の県庁所在地――の主要74市区にアンケートや電話取材をし、HPVワクチン接種記録の保存状況などを尋ねた。
HPVワクチンは09年に国内で承認。
10年11月から国の緊急促進事業として公費の助成対象になり、13年4月から法律に基づいて市区町村が行う定期接種となった。
定期接種になると、市区町村は最低でも5年間、接種記録を保存するよう法律で義務づけられている。
毎日新聞が調査した主要74市区の大半は法定の保存期間経過後も、電子データ化した接種記録を残し続けている。
だが、記録を一部廃棄していた10市区は、保管スペースが必要となる紙ベースの予診票で主に保存し、電子化への移行が遅れていた。
HPVワクチンを巡っては、痛みやしびれといった副反応を訴える声が相次ぎ、定期接種となって2カ月後、はがきなどで接種を個別に案内する「積極的勧奨」を国がとりやめ、それから約9年間中断した経緯がある。
これを受けて沖縄県は15年8月、県内の各市町村に対し、法定の5年を超えて長期保存するよう求める通知を出した。
一方、厚生労働省は保存期間の延長を求める通知を送ったことはないという。
京都大大学院の中山健夫教授(健康情報学)は「接種記録は人の生涯の健康に関わる。長期間の保存が必要だ」と指摘している。
参照元:Yahoo!ニュース