「24時間で1匹…」かつて9万匹近くも獲れた“サケの漁場”のいま 昨シーズンの漁獲数は過去最低の151匹「日本のサケがなくなるのでは…」関係者に募る危機感
青森県内の川を遡上するサケが近年、激減している。
漁獲数がかつて、県内1位だった奥入瀬川の漁協では、昨シーズンは6年前の1%未満にまで落ち込んだ。
関係者は「このままいけば青森県のサケがなくなる」と危機感をつのらせている。
十和田湖から流れる「奥入瀬川」。
サケを採卵し、ふ化させている奥入瀬川鮭鱒増殖漁業協同組合は、漁獲数が2022年まで県内1位でしたが、いまは深刻な不振に直面している。
奥入瀬川鮭鱒増殖漁業協同組合 戸来敏幸 組合長「8万匹くらい獲れていた時は、1日で設備が2回いっぱいになったけれども、令和になってからどんどん下がって、きょうは24時間で1匹。考えられないな」
漁協では、主に特殊な水車で川を遡上するサケを獲っていました。かつては、この時期になると…。
サケを獲るのは9月~翌年の1月までで、シーズンが到来すると漁協は活気に溢れていた。
近年も漁獲数は県内1位で、2015年と18年のシーズンは9万匹近く獲れたが、その後は急激に落ち込み、昨シーズンは過去最低の151匹にまで減った。
今シーズンは10月末の時点で192匹、昨シーズンほどではないが、依然として厳しい状況が続く。
奥入瀬川鮭鱒増殖漁業協同組合 戸来敏幸 組合長「漁師にサケを獲ってもらうために、ふ化放流しているから、卵がとれないと海でも獲れない。国民の貴重なタンパク源がなくなる。このままいけば青森県・日本のサケがなくなるのではないか。そういう危機感があります」
なぜ、遡上するサケは激減しているのだろうか―。
組合は、奥入瀬川の河口から約5kmの場所でサケを獲り、卵をふ化させて稚魚を放流している。
北上したサケは北太平洋で3年~5年ほどかけて育ったあと、再び奥入瀬川へ戻ってくる。
ただ、近年は温暖化により海水の温度が上昇。海流が変化し、稚魚が北上しづらくなったうえ、エサとなるプランクトンが減少しているとされている。
このため、いまは月に1回、国の水産資源研究所の職員が漁協を訪れ、近年の海流の変化を踏まえた稚魚の育て方などを指導している。
国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所 さけます部門 大本謙一 主幹「速い海流が入ってきて、稚魚が北上できない状況になっていて、いままで放流していたサイズでは北の海まで到達できない状況。ふ化場の技術としては(体力がある)大きな稚魚を育てて放流することが重要になっています」
漁協は、体力がある稚魚を育てるために初の取り組みとして、2024年は特殊な栄養剤を与えることにした。
さらに、これまで5cmの大きさの稚魚を放流していたが、2024年は6cm以上にまで育てることにした。
ただ、こうした対策は、そもそもサケが獲れて採卵できなければ講じることはできない。
再び、サケが多く遡上する川へ戻ってほしい。
関係者の思いは切実だ。
奥入瀬川鮭鱒増殖漁業協同組合 戸来敏幸 組合長「周りや北海道の話を聞くと、(サケは)今年もあまり来ないかな。だけど、そう言っているとやる気がなくなるから、(最盛期の)11月末に期待してなんとか来るだろうという思いで頑張っています」
サケの漁獲量の回復には数年単位で取り組むことが必要で、その道のりは厳しく、まだ先行きは見通せないのが現実だ。
県内のサケの不漁は奥入瀬川だけではない。
県内のサケの漁獲、昨年度は河川で獲った採卵用は3615匹で前年比78.1ポイント減少した。
この採卵した稚魚が戻って獲れる沿岸での漁獲数も5万9042匹で前年比68.7ポイント減少だ。
この傾向は全国も同様で、高値傾向になっているという。
参照元:Yahoo!ニュース