「家じまい」で遺品整理、トラブル絶えず 相談件数10年で3倍に 悪徳被害に遭わない対策は
ネット広告の6倍の額を示され、解約にはキャンセル料が必要と言われた-。
自宅や実家を処分する「家じまい」。
超高齢社会で「大相続時代」が訪れると言われる中、遺品整理サービス業者とのトラブルが相次いでいる。
国民生活センターに寄せられた相談はここ10年で3倍になった。
ネットで安さを前面に打ち出す業者も多いが、どのように選べば良いのだろうか。
インターネットで検索すると、遺品整理サービス業者のページがずらりと並ぶ。
超高齢社会で死亡者数は増え続けている。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、高齢者の死亡者数が増えていくペースは、全年齢の死亡者数のペースを上回る。
2023年の65歳以上の死亡者は約136万人だが、40年には約157万人まで伸びると予想されている。
それに伴い、高齢者が住んでいた家を継ぐ家族がいないケースも増えるとみられる。
総務省の住宅・土地統計調査によると、23年の空き家数は約900万戸。
40年前に比べ、約2.7倍に増えた。
空き家を放置すると、庭木や雑草などの管理ができず、近隣に迷惑をかけることにつながりかねない。
固定資産税などの維持費用もかかる。
これらのことから、急増しているのが、「家じまい」のための遺品整理サービス業者だ。
一方でトラブルも増えている。
国民生活センターによると、全国の消費生活センターなどに寄せられた遺品整理サービス関連の相談件数は、13年に73件だったが、23年は209件と約3倍になった。
「ネット検索で『1LDK8万円』と示されているのを見て依頼したのに、見積もりしてもらうと、1LDKなのに16万円と言われ、明細も示されなかった。そのまま契約してしまったが、解約しようとすると契約額の半額を求められた」
「ネット広告で『軽トラック詰め放題3万~4万円』と書かれていたが、見積もりで『軽トラ5台分はある』として18万円を要求された。実際の作業では1台分だけだった」
「こちらの希望日では作業できないと言われたので、作業日に立ち会いができなかったところ、処分しないでほしいと伝えてあった物が全部処分されていた」
国民生活センターは、複数社から見積もりを取る▽作業内容や費用を明確に出してもらい、見積書を十分確認する、料金やキャンセル料、具体的な作業内容を事前に確認する、残しておく遺品と処分する遺品を分けておく-などの対策を示している。
同センターによると、見積もりのための来訪で契約を求められたり、広告と実際の料金に開きがあったりするケースは、クーリングオフが適用され、契約を解除できることがあるという。
一般社団法人「心結(しんゆう) 家じまいアドバイザー協会」(兵庫県伊丹市)代表理事の屋宜(やぎ)明彦さん(45)に、悪徳業者に遭わないための対策を聞いた。
屋宜さんによると、ポスティングのチラシで業者を見つけた場合は、インターネットで検索してみるのが良いという。
ホームページがなく、連絡先が携帯電話だけなら注意が必要。会社の住所が分かれば、ネットの地図で検索してみる。
屋宜さんは「会社をつくってはつぶすのを繰り返しているところもある。住所を検索すると、該当場所が公園だったこともある」と説明する。
業者に見積もりに来てもらった際は、スタッフがそろいのユニホームを着ているか、あいさつがきちんとできているかなども判断基準の一つになる。
そして見積もりは口頭ではなく、必ず紙やメールなど、可視化できる形できちんと出してもらうことが大切という。
料金が税込みかどうかも確かめなければならない。
また、見積もりから料金が上がる可能性があるかも、事前に確認しておくと良いという。
「何が増えたら料金が上がりますか」、「何を減らしたら料金が下がりますか」この二つを聞いておくことが大切という。
答えがあいまいな業者は要注意。
屋宜さんは「見積もり時と作業時で状況が変わっていないのに、『トラックに積んでみたら意外と量が多かったので』と料金を上げる業者もいる」と指摘する。
過去には、トラック積み放題の定額料金で契約したはずが、荷台の枠の高さ以上に積むと追加料金が必要になることを巧みに隠され、見積額の数倍の料金を請求された人もいるという。
買い取れる品を廃棄品として持ち帰り、無断で売却する業者もいるので、作業にはできるだけ立ち会うことも大事という。
このほか、処分する荷物が不法投棄されれば、依頼者が罰せられることもあるので、業者には処分先を確認しておくと良いという。
参照元∶Yahoo!ニュース