シリア反政府勢力、アレッポの一部を掌握
シリアの反政府勢力が29日、同国第2の都市アレッポで複数の地区を掌握した。
イギリス拠点のNGO「シリア人権監視団(SOHR)」によると、同日夕方の時点で、反政府勢力が市の半分以上を掌握している。
シリア政府に対する反政府勢力の攻勢としては、数年ぶりの大規模な展開となっている。
反政府勢力は2016年に、国軍によってアレッポを追われた。
イスラム過激派組織「ハヤト・タハリール・アル=シャーム機構(HTS)」に関係のあるチャンネルに投稿された動画には、市内で車両に乗っている反政府勢力の戦闘員と思われる姿が映っている。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、この映像がアレッポ西郊で撮影されたものだと確認した。
他方で政府軍は、27日にHTSとその同盟勢力による攻勢を受けた後、アレッポおよびイドリブ県の複数の町で、国軍の拠点を回復したと明らかにした。
シリアでは、バシャール・アル・アサド大統領の政府が2011年に民主化運動を弾圧した後、内戦が勃発。
これまでに50万人以上が命を落としている。
アサド政権に対立する武装勢力の多くは、混乱に乗じて広範な領土を掌握した。
これにはジハーディスト(イスラム聖戦主義者)も含まれる。
シリア政府はその後、ロシアや他の協力国の支援を受けて、失った地域の大部分を奪還した。
イドリブは反政府勢力の最後の拠点で、主にHTSが支配しているものの、トルコ支援の反政府勢力やトルコ軍も駐留している。
反政府勢力系チャンネルでは29日、「我々の部隊はアレッポ市内に進入し始めた」という声明が投稿された。
BBCが検証した映像では、中世にさかのぼるアレッポ市内の城塞から約7キロ離れた通りを、複数の戦闘員が走っている。
BBCが検証した別の映像では、アレッポ大学近くの地域から荷物を持って歩く大勢の姿が確認された。
この映像は、反政府勢力が市内に進入したとHTS系メディアが主張する場所から、3キロ離れた場所で撮影されている。
シリア政府は、援軍部隊がアレッポに到着し、反政府勢力を掃討していると発表した。
軍関係者はロイター通信に、アレッポ発の全フライトがキャンセルされ、空港が閉鎖されたと話した。
シリア国内に情報源のネットワークをもつシリア人権監視団(SOHR)によると、シリアとロシアの軍機が29日、アレッポ地域で23回の空爆を行った。
SOHRによると、この戦闘で255人が殺害された。
シリア政府軍と反政府勢力との戦闘で、これほどの死者が出るのは数年ぶりだという。
イドリブ県では、アサド政権を支えるロシアと反体制派を支援するトルコが2020年に停戦で合意。
これに伴い政府軍によるイドリブ奪還の動きは止まり、イドリブでの戦闘の大部分が収束していた。
しかし、HTSとその同盟勢力は27日、「攻撃を抑止する」ために攻勢を開始したと発表。
政府と政府系の民兵組織が、地域の状況を激化させていると非難した。
反政府勢力によるこの動きは、シリア政府と協力諸国が他の紛争に気を取られている中でのものだった。
隣国レバノンでは、イランの支援を受けるイスラム組織ヒズボラに対して、イスラエル軍が大打撃を与えた。
ヒズボラはかつて、イランが支持するアサド政権を支えてシリア内戦に参戦し、政府軍の優勢回復に貢献した。
また、イスラエルはシリア国内で、イランおよびイランが支援する組織関連の目標に対する空爆を強化している。
参照元∶Yahoo!ニュース