ユニクロの柳井正氏、新疆綿は「使っていない」 BBCインタビューで説明

中国の国旗を撮影した写真

BBCインタビューで説明大井真理子、ビジネス記者ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長が、ユニクロは中国・新疆産の綿花を使っていないと初めてBBCに認めた。

かつては世界三大綿と呼ばれていた新疆綿だが、中国政府が新疆ウイグル自治区で、イスラム教徒が大部分を占める少数民族ウイグル族を収容施設に収容し、民族迫害をしていると報じられるようになったことを背景に、2021年から多くのブランドが新疆綿の使用を中止し、アメリカ政府はそれを使った製品の輸入を禁止した。

しかし懸念を発表した企業に対し、中国では製品の不買運動が広がった。

当時、柳井氏は「政治的な質問にはノーコメント」などと明言を避けてきた。

中国での反発を避けようとするのは柳井氏に限ったことではない。

映画「バービー」は、中国が主張する南シナ海の領域を示す「九段線」を描いた地図を使用し、ベトナムで上映禁止に。

またアップルも、中国政府に譲歩していると長年批判されている。

柳井氏が新疆綿について明言しなかった結果、ユニクロは中国市場での人気を維持し、過去最高の業績につながっている。

BBCは今月、東京で柳井氏にインタビューし、環境・人権を念頭にサプライチェーンを改革しているのは、新疆綿が理由か聞いた。

「それは使っていません」と柳井氏。

「どこの綿っていうことを言ったとしても……」と続けたのち、「まあこれ以上言うと政治的になるんでやめましょう」と答えた。

それ以上語らなかった理由は、インタビュー前半の柳井氏の発言に隠されているのかもしれない。

中国はユニクロにとって消費者市場としてだけでなく、製造拠点としても大事なマーケットだと、柳井氏は説明した。

ユニクロは近年、欧米で積極的に出店しているとはいえ、柳井氏いわく「世界で知られていないブランド」。

その知名度はアジアの方が高い。

中国には日本を上回る数の店舗があり、中国国内の消費が冷え込んでも戦略を見直す必要はないと言う。

「14億人、人がいますから。まだ900から1000くらいしかないでしょ、店舗が。僕は3000店舗ぐらいは行けるんじゃないかなと思っている」

一方で、2009年の時点で、ユニクロが毎年作る5億点の製品のうち、8割が中国で製造されていた。

当時のインタビューでは、中国での製造コストが高くなってきたから、もっと安いカンボジアに移そうと思っていると語った柳井氏。

現在は、その自分のコメントに笑いながら、中国の製造技術を他国でまねることは難しかったと言う。

「一朝一夕でできるようなもんじゃないんで、たとえば工場を作ったとしても、カンボジアもそうですし、ベトナムもそうなんですけど、やっぱり中国資本みたいなものがそこに一緒に入っていくっていうことと、現地資本みたいな人を中国の人が指導するみたいなことでやっていかないと、なかなかね」

アパレル業界は競争が激化し、中国発のファストファッション企業の「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」が人気だ。

しかし柳井氏は「ファストファッションの将来はないというふうに思います」と言う。

「やっぱり安易に物作りしすぎですよね。着てもワンシーズンで終わり。そういうのはやっぱりあまりにも地球の資源を無駄にしている」

自分の着ている洋服を指差し、「我々の服っていうのは何シーズンも着られるんで、僕のこういうシャツとかセーターみたいなものも何年前のものか分からないし」と笑う。

ユニクロの増収増益の秘訣(ひけつ)の一つは、消費者が毎日の生活で必要なものに焦点を当ててきたことだ。

東レとのコラボレーションにより、ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンといったヒット商品を世に送り出し続けてきた。

創業40周年の今年、売上高は過去最高の3兆円を突破した。

そのことについては、「一番最初ね、父親から今の企業を継いだ時は、1億いかないぐらいですよね。それが3兆円できたんですから」と柳井氏。

次の目標は売上高10兆円、そして「ZARA」などを展開するスペインのインディテックスを抜き、アパレル企業の売上高世界一になることだ。

75歳の柳井氏に、現役のうちに達成が可能かと聞くと、「達成したいなっていうふうに思っていますし、達成しないといけないんじゃないかなというふうに思っています」。

しかしそのためには、中国だけでなく、人権問題を重視する消費者が増えている欧米での成功も必要だ。

中国事情に特化したビジネス調査会社「ストラテジー・リスクス」のアイザック・ストーン・フィッシュ最高経営責任者は、企業には中国とアメリカの両方から圧力がかかっていると強調し、こう続ける。

「もはや政治的中立を保てる大企業は一つもない」

「中国もアメリカも企業に対し、どちらの側につくのか決めるよう求めている。日本はこの問題ではアメリカ寄りの姿勢を取り続けるだろう」

今後、第2次ドナルド・トランプ米政権の下で、米中貿易摩擦の悪化も予想される。

そうした中、柳井氏の政治的中立を保つ綱渡りは、いっそう難しくなるかもしれない。

参照元∶Yahoo!ニュース