親の遺体、困窮の子が放置 全国で相次ぐ 社会的に孤立、他者の干渉拒むケースも
高齢の親の収入で生活している成人の子が、親の死後に葬儀代や埋葬費に困り、遺体を放置する事件が相次いでいる。
山口県岩国市で起きた死体遺棄事件では、子が社会的に孤立し、窮状を誰にも相談できなかった実態が浮かぶ。
専門家は「同様の事件は全国各地で起きている」として、問題を抱える家庭に行政や地域が継続的に関わる必要があると指摘する。
岩国市で9月、当時78歳の父親の遺体を自宅に放置したとして無職の男(47)が逮捕、起訴された。
男は10月下旬の公判で「いずればれることも罰せられることも分かっていたが、お金がなく仕方がなかった」と語った。
今月14日、山口地裁岩国支部で懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の有罪判決を受けた。
関係者などによると、男は昨年3月、17年間勤めた建築資材会社を辞め、同6月ごろ父親方に身を寄せた。
父親の年金で暮らしていたという。
父親は今年7月ごろから寝たきりの状態になり、8月下旬に死亡したのを男は認識した。
家族が亡くなった際の手続きをインターネットで調べたが、葬儀代などの費用がなく、遺体を9月上旬まで放置したとされる。
公判では、男は過去に起こした交通事故で被害者に慰謝料を支払うため、多額の借金があったことも判明。
男は「誰にも相談することができなかった」と語り、父親から「恥ずかしいから早く働け」と日常的に言われていたと打ち明けた。
近くの民生委員によると、男の母親は2年前に亡くなり、男と父親は近所の人と疎遠だったという。
この民生委員は父親と面会し、安否などを確認する同意を求めたが拒まれた。
家庭の事情を知られたくない様子だったという。
岩国市の担当者は「行政の福祉支援を拒んだり、途中からサービスの中止を申し出たりするケースは一定数ある」と話す。
親の遺体を自宅に遺棄した事件は、7月に広島市安佐南区と山口県周防大島町でも起きた。
安佐南区では当時会社員だった50歳の男が当時86歳の母親の遺体を、周防大島町ではともに無職の50歳と45歳の兄弟が当時77歳の母親の遺体を放置し、親の年金などをだまし取ったとして、それぞれ死体遺棄と詐欺の罪で起訴された。
いずれも有罪判決を受けた。
ひきこもりの子がいる家庭などの問題に詳しい関西福祉大の谷口泰司教授(障害者福祉)は「高齢の親が中年の子を経済的に支える家庭は全国で増えている。
親子が互いに強く依存しているため他者の干渉を拒むケースも多い」と指摘。
「すぐに心を開いてもらうことは難しいが、行政や地域住民が繰り返し自宅を訪れることで徐々に信頼してもらえるケースはある。粘り強く関わっていく必要がある」と強調する。
参照元∶Yahoo!ニュース