データセンター対応で化石燃料使用急増の恐れ、再エネ開発追いつかず
データセンター関連の電力需要が急拡大している影響で、地球温暖化にとって心配な事態が起きる可能性が高まっている。
それは化石燃料の使用が近く大幅増加することだ。
ロイターが各国の電力会社や規制当局者、研究者らに取材したところ、人工知能(AI)の登場とクラウドコンピューティング普及に起因する驚くほどの電力需要の伸びは、天然ガスや、場合によっては石炭を含めた化石燃料で賄われようとしている。
背景には、クリーンエネルギーの導入ペースがあまりにも遅く、需要に追いつけていないという事情がある。
世界のデータセンターの3分の1が拠点を置く米国では、電力各社が新たな天然ガス火力発電所を建設するとともに、老朽化した化石燃料使用発電所の引退を先送りして、データセンターへの電力供給に対応。
ポーランドでは電源構成における石炭の比重がなお大きく、ドイツやマレーシアでも石炭が利用されかねない、と複数の企業幹部や規制当局者、専門家などが明らかにした。
このような見通しは、既に電力の脱炭素化目標達成に苦戦し、アゼルバイジャンで22日まで開催される国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)に参加した世界各国にとって、新たなハードルが加わることにもなる。
COP29では初めてデジタル化と気候変動の関係を議論する機会が設けられ、中国や韓国を含めた68カ国が支持する形で、デジタル化の環境への影響を抑制するとの宣言が打ち出された。
しかしビッグデータを扱う巨大IT企業のグリーン化を巡る約束は物足りない。
メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなどは再生可能エネルギーを調達し、クリーン電力や炭素クレジットを通じて温室効果ガス排出量を実質ゼロにする決意を示している。
とはいえそれらは、どこか別の場所で有効活用できたクリーン電力を送電網から吸い上げるだけの取り組みであることが少なくない。
一方、データプロバイダーが新たなデータセンター用電力を先進的な原子炉、ないしは原発の再稼働で賄うという取り決めは不確かであったり、実現まで何年もかかったりする。
メタの広報担当者は「拡大を続ける需要に追いつくためにより多くの再生可能エネルギーが必要だということは、誰もが認めるだろう。どうやって供給を満たすかについては、電力各社がコメントすべきではないだろうか」と述べた。
アマゾンはロイターに、送電網向けの新たな再生可能エネルギーへの投資は同社の脱炭素化戦略の一環だと説明した。
モルガン・スタンレーの見積もりによると、世界のデータセンター業界が2030年までに排出する温室効果ガスはおよそ25億トンと、ロシアの年間排出量に相当する。
米バージニア州北部は世界屈指のデータセンター集積地帯で、地元の電力会社ドミニオン・エナジー(たどり着いた対応策はガスだ。
ドミニオンは現在、チェスターフィールド郡に1000メガワット(MW)規模の天然ガス発電所を建設中。
向こう15年で設定した電源構成における再生可能エネルギーの目標比率を最近になって95%から80%に引き下げている。
広報担当者は「全体として当社のサービス地域での電力需要は未曾有のペースで伸び続けている」と述べた。
ロイターが直近の決算説明を調べたところでは、他の幾つかの米電力会社は化石燃料使用発電所の操業を維持した上で、新規建設にも乗り出している。
例えばエンタジーは過去50年で初めて天然ガス火力発電所の建設に着手した。
754MW規模の発電所は、ミシシッピ州にアマゾンが立ち上げる2カ所のデータセンターに電力を供給する。
またニソースが29年までに計画している新規設備投資額193億ドルの半分近くは、天然ガス火力発電システムの改善に充当され、インディアナ、オハイオ、バージニア各州で急速に広がるデータセンター市場に対応する。
トータス・キャピタルのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロブ・サメル氏は、データセンターにとって天然ガスは明快な回答だと指摘。
「最も低コストで、最も信頼度は高く、石炭からの転換という面では脱炭素化になっている。完璧な解決策かと言えばノーだが、これらのデータセンターの電力を完全に賄える方法が果たしてあるのかどうかは分からない」と述べた。
S&Pは、データセンターが30年までに米国の天然ガス需要を日量30億─60億立方フィート上乗せすると予想している。
クリーンエネルギー関連のコンサルティングを手がけるRMIは、そうした動きは米国の排出量削減の成果を場合によっては数十年にわたって悪化させると警告する。
トランプ次期米大統領の政権移行チームに近い複数の関係者は、同氏が掲げる電力システム強化計画では再生可能エネルギーよりも天然ガス開発が優先される公算が大きいと語った。
欧州の一部では、データセンター向け電力に石炭が求められている。
ポーランドの場合、新たなデータセンター設立計画が相次ぐ一方、再生可能エネルギー生産量が依然として少ないため、少なくともその電力需要の一部は石炭などのベースロード電源で充当する必要があるとされる。
国際エネルギー機関(IEA)によると、ポーランドの電源構成に占める石炭の比率は低下傾向にあるものの、昨年時点でも60%を超えている。
ドイツでマイクロソフトが今年発表したのは、ハンバッハ炭鉱近くで32億ユーロ(33億8000万ドル)を投じてデータセンターを拡張する計画だ。
マイクロソフトはこの計画が石炭に依存しているどうかについて言及を控えた。
広報担当者は「まだ計画の初期段階というのがコメントしない理由だ」と述べた。
マレーシアでも政府高官によると、幾つかのデータセンターが割高な再生可能エネルギーの代わりに、石炭・ガス火力発電が主流の送電網を利用している。
この高官は、今年入札に掛けたグリーン電力の50%弱しか実際に購入されていないと明かした。
参照元:REUTERS(ロイター)