17日始発~夕に京浜東北線を一部運休「大井町駅工事」何が目的か 大規模再開発の「玄関口」整備へホームを拡幅

大井町駅の外観を撮影した写真

首都圏のJR線では珍しくなくなった、駅や線路の工事による電車の一時運休。

2018年から2023年まで5回にわたった渋谷駅の線路切り換えや、2020年3月開業の高輪ゲートウェイ駅に関連する工事など、近年はほぼ毎年、都心部で電車を止めての工事が行われている。

2024年の秋は「大井町駅」だ。

JR東日本は同駅の京浜東北線ホーム拡幅工事のため、11月17日の始発から16時半頃まで同線の品川―蒲田間を運休。

駅の北側ではJR東日本が2026年3月の開業に向けて「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」と名付けたエリアの大規模再開発を進めており、ホームの工事もその一環だ。

大井町駅は京浜東北線と東急大井町線、そして地下にりんかい線が乗り入れる品川区内の交通の要衝。

JR線の1日平均乗車人員は8万4189人(2023年度)で、四ツ谷駅(8万5926人)に次いでJR東日本全駅中で46位だ。

JRの改札は、線路をまたぐ駅ビル「アトレ大井町」のある中央口と、東急大井町線の駅に隣接する東口・西口(東口駅舎)に分かれている。

中央口周辺は、西側にホテルや百貨店などからなる複合施設「阪急大井町ガーデン」、東側には品川区立総合区民会館「きゅりあん」やヤマダデンキなどの入る再開発ビルがそびえる。

もう一方の東口駅舎はJRの線路をまたぐ都道420号に面しており、道路の両側に飲食店などが軒を連ねる商店街が続く。

京浜東北線は街を南北に貫く形で走っており、ホームは両側を線路に挟まれた「島式」。

中央口への階段やエスカレーター・エレベーターはホームのほぼ真ん中に、東口・西口へのエスカレーターなどは東京寄りの端にある。

拡幅は東口・西口へのエスカレーターなどに近いホームの東京寄り、大宮方面行き(1番線)の先頭車両付近で実施。

長さ53mにわたり、ホームの幅を最大で70cm広げるという工事だ。

最も広がるのは10号車(先頭車両)付近。

これに伴い、線路も約250mにわたって最大80cm横にずらす。

工事に先駆け、拡幅する部分に当たる3両分のホームドアは8月中旬に撤去。

9月下旬以降は線路の移設に備えてバラスト(砕石)を袋詰めしたものに置き換えるなどの準備を進めてきた。

ホームはまず仮の状態で拡幅し、その後本設の形にするため、ホームドアの再設置は2025年8月ごろとなる予定だ。

電車の運休を伴う線路の切り換え工事は、高輪ゲートウェイ駅開業に向けた2019年11月の品川駅や、2021年10月・2023年11月の渋谷駅など、秋に行うケースが多くみられる。

今回の大井町駅も11月だが、JR東日本によると「とくにその時期(秋)に合わせて行っているわけではない」。

日程は、「全体の工程と、駅周辺でのイベント(がないこと)などを考慮して決めた」という。

JR東日本はホームの拡幅について、「駅周辺の開発で東口側の利用が増える見込みのため、利便性向上を図るのが目的」と説明する。

利用増を見込むのは、東口駅舎が再開発地区「大井町トラックス」の玄関口になるためだ。

再開発に合わせ、東口駅舎は人工地盤を広げてコンコースを拡張し、大井町トラックスに直結する「広町改札」と「北口」(どちらも仮称)を開設する。ホームと駅舎を結ぶエスカレーターや階段は増設しないが、エスカレーターはすでに上り・下りとも2基ずつあるため、キャパシティは十分そうだ。

■ビルや商業施設のほかに広場も

 大井町トラックスのエリアは駅の北側、東口駅舎の裏手付近から東急大井町線の高架沿いにかけて広がる約2万9400平方メートルで、山手線の車両基地である東京総合車両センターにも面している。ほとんどはかつてJRの社宅があった場所だ。社宅は2014年3月までに機能を停止し、その後は期間限定のスポーツ施設や劇団四季のシアターなどの用地として使われていた。

大井町トラックスは2つの地区があり、駅寄りの「A-1地区」は主にオフィスが入居する地上23階建ての「ビジネスタワー」とホテルや賃貸住宅が入る地上26階建ての「ホテル・レジデンスタワー」の2つの高層ビルを中心に、歩行者デッキなどに面したアウトモール(屋外)型の商業施設やバスやタクシーが乗り入れ可能な交通広場などを整備する。ビジネスタワーには映画館「TOHOシネマズ」も入居予定だ。

 もう1つの「A-2地区」は品川区の新庁舎予定地に面しており、区と連携して災害時の広域避難場所にもなる約4600平方メートルの広場を整備する。

 工事は2023年4月に本格着手。2024年10月に、名称を大井町トラックスに決めたと発表した。トラックス(TRACKS)は線路や通り道の意味で、隣接する車両基地や整備する歩行者デッキのイメージなどに由来する名という。総事業費は非公表だが、開業後は年間約130億円の収益を見込む。

■大変貌する大井町

 コロナ禍の苦境からは抜け出したものの、リモートワークの普及や人口減少など、鉄道を取り巻く環境は決して明るくはない。大手私鉄と比べて鉄道業への依存度が高いJR東日本の大きな課題は、不動産など「非鉄道業」の収益拡大だ。

【写真の続き】イメージ図で見る「大井町トラックス」の屋外型商業施設や、新たに開設する改札から直結の駅前広場
 同社は2020年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅周辺に広がる「高輪ゲートウェイシティ」を中心に浜松町から大井町にかけての各駅で都市開発を進めており、このエリアを「広域品川圏」として収益基盤強化の1つの軸と位置付ける。大井町トラックスはその大きな柱だ。

 2026年春の再開発エリア開業で、駅周辺の人の流れや街の姿も大きく変わるであろう大井町。電車を一時運休してのホーム工事は、その時が着々と近づいていることを示している。

参照元:Yahoo!ニュース