20の偽ニュースサイト、国内大手メディア装い記事を無断転載 表記の一部は中国語
国内の大手メディアを装うなどした20の偽ニュースサイトが相次いで開設されていることが、読売新聞の調べでわかった。
記事を無断転載しており、著作権法や商標法に違反する疑いがある。
プロバイダー(接続業者)が共通しているほか、サイト内の表記の一部に中国語があり、専門家は偽情報などで敵対勢力を混乱させる「影響工作」の準備として組織的に開設された可能性を指摘している。
プロバイダーやドメイン(ネット上の住所)など、公開情報が確認できる複数のサイトを利用して調べたところ、「YOMIURI DAILY」のほか「ASAHI TIDINGS」「NHKニュース」といった国内の新聞社やテレビ局、通信社、出版社の名称を使うなどした20サイトが見つかった。
名称を使われた10社はいずれも関係を否定している。
各サイトは毎日更新され、実在の報道機関が配信した記事や写真をそのまま転載。
1日数百本が転載されるケースもある。
偽情報や日本を殊更におとしめるような記事は見当たらなかった。
各記事には、引用元と「他のメディアから複製した」との記述もあるが、無断転載は著作権法に違反する。
名称の使用も商標法に抵触する疑いがある。
20サイトのプロバイダーはシンガポールの同一企業とみられ、ドメインの登録日は、昨年3月6日、今年1月18日、同4月12日の3日間に集中し、IPアドレス(ネット上の住所の数字列)も近接していた。
各サイトには広告の表示がなく、ソースコード(設計図)に中国語が使われている箇所があり、同じフォーマットで構築されたとみられる。
また、サイト内の記事ジャンルの表記では「スポーツ」を「体育」とするなど、中国語が交じっていた。
メディアを装ったサイトを巡っては、韓国の情報機関・国家情報院などが昨年11月、韓国メディアになりすました38の偽サイトを運営しているとして、中国・深圳(しんせん)のPR会社などの企業名を公表。
カナダの研究機関「シチズンラボ」も今年2月、欧米やアジアなど30か国で地元メディアを装った中国寄りの情報発信が確認されたと明らかにした。
今回の偽ニュースサイトの乱立について、ネット上の世論操作に詳しいセキュリティー専門家の岩井博樹氏は「明らかに組織的に構築されている。正規の主要メディアと誤認される恐れがあり、偽サイトが有事に偽情報を流せば脅威になる」と分析。
サイバー安全保障に詳しい笹川平和財団の大沢淳・上席フェローは、現段階で偽情報の発信が確認されていないことについて「主要メディアの信頼性を利用した作戦に向けて準備している段階ではないか」と話した。
参照元:Yahoo!ニュース