「テスラ信者」、予想上回る業績で忠誠新たに

米電気自動車(EV)大手テスラは最近、口ばかり達者で実績に乏しかった。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はいまだに大衆向けの安価なEVを生み出せていない。
市場シェアと利益率は縮小している。
足元では、社運をかける完全自動運転のロボタークシー「サイバーキャブ」をお披露目したが、市場の反応は冷ややかだった。
それだけに、23日に発表した2024年第3・四半期決算が予想を上回ったことはささやかながら新鮮な変化であり、「テスラ信者」に希望をもたらした。
営業利益が前年同期比で54%も伸びたのは、主に経費削減によるものだ。
売上高は8%の伸びにとどまっている。
経費削減により、自動車事業は「規制クレジット」の販売分を調整したベースの粗利益率が17.1%と、前期のわずか14.6%から改善した。
蓄電池事業、サービス事業のそれぞれの利益率は31%、9%と、過去最高を記録した。
粗利益率はテスラにとって重要な尺度だ。
コックス・オートモティブによると、テスラの今四半期の米EV市場でのシェアは48%と、2年前の63%から下がった。
競争激化により、EV業界全体で値崩れが起きている。
テスラのリース車を除く1台当たり売上高は再び減少した。
しかし、自動車製造コストはそれより速いスピードで下がり、過去最低の1台当たり3万5106ドルとなっている。
マスク氏は、テスラが競合他社よりもコスト破壊と規模拡大をうまく進められるという前提に立っており、コストの急低下は重要だ。
この前提は今のところ崩れていない。
米EV2位のゼネラル・モーターズの米EV市場でのシェアは9%にとどまっている上、EV事業はまだ黒字化していない。
テスラがこの環境下で利益を伸ばすことができれば、首位の座を維持できるかもしれない。
問題は、約7000億ドルに上るテスラの株式時価総額が、段階的な業績改善ではなくマスク氏の「大風呂敷」が実現することを前提とした水準であることだ。
マスク氏は23日、納車台数が来年20─30%増えるとともに、その頃には3万ドルを下回るモデルを発表するはずだと訴えて相変わらずの大言壮語ぶりを見せた。
だが、実際には、2024年の売上高が「わずかに」伸びるという同社の予想でさえ実現のハードルは高く、今四半期の売上高が過去最高を記録する必要がある。
テスラは、サイバーキャブが真の成長エンジンとなり、市場を根底から覆すと想定している。
しかしながら、この車の外見は突飛で、テスラは自動運転へのアプローチで苦戦している。
同社がこのほど披露した人形ロボット「オプティマス」も、実用化への道のりは遠そうに見受けられる。
第3・四半期の業績が改善したことで株主はテスラへの忠誠を新たにしたかもしれないが、期待を膨らませ過ぎている可能性もある。
*テスラが23日発表した第3・四半期決算は、売上高が前年同期比8%増の252億ドル、営業利益も同54%増の27億ドルだった。
参照元:REUTERS(ロイター)