育休取れるのか 校長に相談したら「担任の替わりいない」 20代の教員の嘆き 1日13時間勤務もある仕事、誇りあっても家庭との両立は不安しか

「気兼ねなく育休を取得できればいいんですが…」。
長野県の公立小学校に勤める20代の男性教諭は、人手不足が続く学校の窮状を嘆く。
妻の出産を控え、校長に育休取得を相談したが「人が足りない」と難色を示された。
担任を受け持っており、代替の教員を探すのが厳しい―と聞いた。
半日出勤を提案されたが「それでは意味がない」。
申請した分の育休を取得できる見通しは立っていない。
教員志願者の減少や現職教員の欠員を背景に、人手の不足感が強まっている。
長野県内の公立校の欠員は5月1日時点で小学校が28人、中学校と特別支援学校がともに8人、高校は6人。県教育委員会が統計を取り始めた2021年度以降の最多を更新した。
中教審は8月、教員の確保や処遇改善に関し、残業代の代わりに給与に上乗せする「教職調整額」の増額や、長時間労働を解消する働き方改革を文科相に答申した。負担が重い学級担任の手当加算や管理職手当の増額を求め、教員が安心して産育休を取得できる体制づくりも盛り込まれた。
男性教諭は、国が働き方改革を図る動きを「素直にありがたい」と受け止める。
ただ、処遇改善を進めても、業務負担の軽減には直結しないとも思う。
「根本的に、もっと教員を増やしてほしい」
小学5、6年は専門教科の免許を持つ教員が授業をする「教科担任制」が外国語(英語)など一部科目で導入されているが、体育や家庭科といった「実技科目にも広げてもらえれば余裕が生まれる」と考える。
中教審は教科担任を小学3、4年へ拡大すると答申したが、「どこまで学校現場に広がるかは読めない」とみる。結局は、新たな教員の確保が不可欠と思うからだ。
勤務先では体育主任を担っており、運動会や水泳授業がある時期は13時間勤務後の退勤が午後9時近くになる。
教え子の成長を実感できる仕事は誇りだ。
しかし、子育てや家庭との両立を考えると、不安を感じずにはいられない。
文部科学省は中教審による8月の答申を受け、教員の処遇改善や働き方改革をさらに加速する考えだ。
2025年度予算編成に向けた概算要求では、残業代の代わりとして支給する「教職調整額」の増額や、小学校中学年への教科担任制の拡充といった関連予算を盛り込んでいる。
中教審は、教育施策の基本的な方向性などを議論する文部科学大臣の諮問機関。小中学校、高校の教育振興などがテーマの初等中等教育分科会や、高等教育の在り方を議論する大学分科会などを常設し、必要に応じてその下に部会を設けている。
今回の議論は、23年5月に文科相が質の高い教員の確保に向けて諮問したことを受け、初等中等教育分科会に特別部会を設置して開始。
学校の指導・運営体制や教員の処遇改善などについて計14回にわたって議論を重ね、24年8月に答申した。
これを受けて文科省が提出した25年度予算の概算要求は、教員の処遇改善に力点を置き、教職調整額を13%へと拡大することを目玉とした。
小学3、4年への教科担任制拡充による人員増や、学級担任と管理職の手当増額も要求した。
ただ、関連予算の膨張に対し、財務省との折衝が難航することが予想されている。
参照元:Yahoo!ニュース