若手社員の8割近くが「管理職になりたくない」 リーダーが育ちにくい時代の「上司代行」の可能性

「上司代行」という言葉をご存知だろうか?
「上司代行」とは、その名の通り、第三者が上司の役割を担うことを指す。
自社の上長ではなく、外部から来たプロフェッショナルが上司となり、社員の育成を行うサービスだ。
この「上司代行」サービス=メンタープロパートナーズ事業を運営する株式会社Hajimariのメンタープロパートナーズ事業責任者の高橋氏によれば、「上司代行に就くのは、ほとんどが起業家や企業の役員など、豊富なビジネス経験を持つ人物」。
現在、100社以上が利用するという「上司代行」、その需要は日増しに高まっている。
企業において、足元の作業を外注することや、外部から派遣された社員の力を借りることはよくあるが、なぜ上司までをわざわざ外部から呼び込み、職務を代行してもらう必要があるのか。
本稿ではこの意外なニーズと効能に迫っていく。
前提として、上司代行が広がる最大の理由は、深刻な人材不足にある。
少子高齢化による生産年齢人口の減少で、労働力は減り続けており、ありとあらゆる業種で採用難に陥っている。
中でも顕著なのは企業のミドルマネジメント層の不足だ。
日本能率協会マネジメントセンターの調査によると、若手社員の77%が「管理職になりたくない」と回答している。
本来、出世や年収アップの象徴であるはずの管理職。
かつての憧れの座が、なぜ今避けられる存在となってしまったのか。
原因として管理職の業務負担の増加があげられる。
管理職の多くは、部下の育成と自身の業務を並行して行う「プレイングマネージャー」として働かざるを得ない。
その結果、管理職は「忙しい」「辛い」というイメージが定着してしまった。
近年はそれに加え、「パワハラ」や「セクハラ」にも注意しなければならず、一般社員には管理職になるのは避けたいという思いを持つ人が少なくないだろう。
企業は、自社で新たなリーダーを育成しづらくなっている状況があり、そこで注目されているのが、社外の優秀なプロフェッショナル人材に上司を代行してもらい、未来のリーダーを育成する「上司代行」というわけだ。
実際、企業はどのように上司代行を活用しているのか?
「ある大手人材企業では、リーダー候補の育成のために6名の上司代行を導入しました。この企業が上司代行を導入した背景には、会社の成熟化に伴う課題がありました。創業期のメンバーである現在の経営陣など幹部は、挑戦や失敗による高い経験値がある。しかし、大企業となった今の会社には、失敗が許されない空気感や、前例の踏襲の連続など、新たな挑戦ができない雰囲気が確立されてしまっていました。そこで、挑戦や失敗ができる場づくりのために、上司代行を導入したのです」(株式会社Hajimari メンタープロパートナーズ事業責任者 高橋氏)
定期的なミーティングの中で、リーダー候補たちは、実務ではなかなかじっくりと教わる時間のない「リーダーとしての心構え」や「再現性のある数字の上げ方」「部署の成長のさせ方」などを上司代行から学んだという。
結果として、実務能力の向上はもちろんのこと、上司代行が指導した部下たちが、新規事業の事業部長を担うまでに成長した。
滑り出しがいいとはいえない新規事業もあるが、そもそも新しい事業が立ち上がったということ自体が大きな成果と言えそうだ。
企業側も「ボトムアップの発言が増えた」「困難にも自分でなんとかしようとする姿勢を感じる」と満足度は高いようだ。
さらには、外部の第三者である代行上司が客観的なアドバイスを送ることで、既存の管理職や社員同士のコミュニケーションが円滑になるという副次的な効果も見られたという。
Hajimariの高橋氏はまた、予期せぬ効果として「部下社員たちの視野が大きく広がったこと」もあげる。
自社に閉じないキャリアのアドバイスを受けることで「人生単位でキャリアについて考えられるようになった」「人生の目標ができた」という声も聞かれたという。
参照元∶Yahoo!ニュース