「買い物ついでに一票」も スキマ時間に期日前投票がトレンド、路線バスやトラックも活用
衆院選が公示され、選挙戦が始まった。
投開票は27日だが、「期日前投票」制度を利用すれば16日から投票できる。
前回2021年衆院選では投票者の3人に1人が利用した。
最近のトレンドは、買い物や授業の合間といった「スキマ時間」を狙うことだ。
ショッピングセンターに投票所を設けたり、車内を投票所に仕立てた路線バスを学校に出張させたりする取り組みが広がっている。
期日前投票は、投票日に用事があり、投票所に行くことができない人が対象だ。
ただ、仕事や病気といったやむを得ない事情だけでなく、レジャーや旅行も用事の一つとして認められている。
あくまでも例外措置のため、投票日当日に投票できない事情があることを誓う「宣誓書」にサインする必要はあるが、事実上誰でもOKになっている。
期日前投票ができる期間は、選挙の公示日翌日から投開票日の前日まで。
今回の衆院選でいえば16~26日にあたる。
投票できる日時は場所によって異なるものの、おおむね午前8時半~午後8時となる。
利用者数は年々増加傾向にあり、前回衆院選の小選挙区では全国で2058万人が利用した。
これは投票者総数の35%にあたる。
そして、期日前投票のメリットは投票日が選べることだけではない。
より投票しやすくするため、多くの人が集まる場所に期日前投票所を設置するのが最近の傾向だ。
たとえばショッピングセンターやデパートだ。
買い物に行ったついでに1票を投じることができるため、投票のハードルは下がる。
さらに投票所そのものが出張してくるケースもある。
「移動期日前投票所」だ。
金沢市では前回衆院選で路線バスを業者から借り上げ、車内に投票箱や記載台を置いて臨時の投票所にした。
授業やゼミの合間に大学生に投票してもらおうと、このバスで市内の6大学を巡回したところ、学生ら558人が投票した。
ミニバンを投票所に仕立て、交通の便が悪い山間部を巡回する例は各地にあるが、なぜバスだったのか。
金沢市選挙管理委員会の担当者は「路線バスならキャパシティーもあり、たくさんの学生が一度に投票に来ても対応できると考えました。今回の衆院選でも行う予定です」と話す。
一方、バス運転手が不足しており、路線バスによる移動期日前投票所を断念せざるを得ないケースもある。
秋田県湯沢市ではこれまで路線バスを移動期日前投票所としてきたが、バス運転手の確保ができなくなり、23年の秋田県議選ではレンタカー会社から借りたトラックで代用した。
「トラックなら市職員でも運転できる」(湯沢市選管)ためで、市内13カ所を回った。
トラックの荷台部分に投票箱を置いて即席の投票所とし、投票者には一人一人、階段を使って荷台に上がってもらったそうだ。
ところが、今回の衆院選には、こうした選管の工夫に水を差しかねない側面がある。
「もう間に合いません。解散と衆院選がバタバタで決まってしまったので……」。
福島県南相馬市選管の担当者はこう打ち明ける。
南相馬市では前回衆院選で、バスを借り上げて移動期日前投票所にし、市内の高校などを巡回した。
高校生に選挙への関心を持ってもらうのが狙いだが、今回は見送る方針だ。
「バスを学校の昇降口に寄せ、生徒たちに投票してもらっていました。ただし学校にも秋にはさまざまな行事があり、バスを校内に乗り入れさせるには調整が必要です。もう時間がありません」(担当者)というのが理由だった。
石破茂首相が衆院解散の方針を表明したのは、首相就任前日の9月30日。
その直前に行われた自民党総裁選では早期解散に慎重な見方を示していただけに、「手のひらを返された」と語る選管関係者は他にもいる。
石破首相は解散方針の表明時、「全国の選管などの選挙準備の観点から本日表明する」と語っていたが、こうした影響は想定外だったのかもしれない。
衆院選の投票率は低迷が続いている。かつては70%を超えた時期もあったが、ここ最近は4回連続で50%台。
ほぼ2人に1人は投票せず、棄権している状況だ。
こうした人たちにどうやって投票所へ足を運んでもらうか――。
そのカギを握る期日前投票をもっと利用してもらおうと、各地の選管で試行錯誤が続いている。
参照元:Yahoo!ニュース