「逆恨みされるのが怖い」韓国で“交際暴力”深刻 別れ話発端で殺人事件も
韓国で交際相手に対する暴力が深刻化している。
2023年の検挙者数は1万3939人と20年に比べ55.7%増え、今年はソウル市などで殺人事件も発生。
別れ際に逆上して犯行に及ぶケースが多く、インターネットのコミュニティーサイトでは「安全な別れ方」の情報を共有し、身を守ろうとする動きも見られる。
「付き合っていた彼から逆恨みされるのが怖い。私の個人情報や動画をばらまかれるんじゃないかと」。
ソウル市の20代の女性会社員は最近、恋人からの暴力事件のニュースを見るたびに不安が頭をよぎる。
今年5月、ソウル市江南区のビル屋上で医大に通う男(25)が交際相手の女性から別れ話を切り出され、凶器で女性を殺害した。
同月、同じ江南区のビル内で60代の男が、60代の女性と女性の娘を殺害。
韓国メディアによると60代の男女は交際中で、別れ話が犯行の発端になったという。
カップル間の暴力である「デートDV」は、韓国では「交際暴力」と呼ばれ、社会問題になっている。
韓国紙マネートゥデイの集計では、韓国で昨年1年間に恋人や夫など親密な関係にある相手によって138人が殺害された。
殺人未遂まで含めると、被害者は449人に及ぶ。
警察庁によると、23年に交際暴力で検挙された1万3939人の内訳は「暴行・傷害」が最多の67.8%で、「逮捕・監禁・脅迫」9%、「性暴力」3.2%と続く。
年別の検挙者数は20年8951人、21年1万538人、22年1万2828人と増加が続く。
高麗サイバー大警察学科のイ・ユンホ碩座(せきざ)教授(寄付金などで研究活動をするよう大学が指定した教授)は「交際暴力が広く認知されて女性や社会の意識が高まり、見過ごされていた暴力も通報されるようになった」と話す。
一方で、19年から5年間の検挙者数の合計は5万6079人だが、勾留されたのは1242人と約2%にとどまる。
被害者が情報の広がりを避けたり、加害者からの報復を恐れたりして処罰を望まないケースが多いという。
周囲が、プライベートな問題として軽視する傾向がいまだに根強いというのもあるとみられる。
コミュニティーサイトには「安全な別れ方」を共有する書き込みが多く見られる。
「別れ話の前に友達や家族に連絡しておく」「周りに人がいる場所で話す」などの事前対策のほか、別れた後も「警察への通報をためらわない」「SNS(交流サイト)を削除し、居場所を明かさない」「同じ境遇の人やカウンセラーと話し、心理的なケアをする」などの具体例もある。
別れ代行業者も続々と誕生している。
別れたい理由や状況を説明すれば、業者がシナリオを作り、叔父などを装って実際に相手と会い、話をつけてくれる仕組みだ。
20代の若者の利用が多いという。
韓国では、家庭内暴力処罰法とストーカー行為処罰法で接近禁止に向けた暫定措置が取れるようになっているが、交際中の暴力については保護措置規定がなく、法整備を求める声も高まっている。
参照元:Yahoo!ニュース