ハンバーグを軟らかいムース食に 調理の秘密は介護食用ゲル化剤

介護スタッフをイメージした写真

1人分だけの介護食を作るって面倒、大変そう、というイメージはないだろうか?

かむ、のみ込む力が低下した方にも喜ばれ、ちょっとした工夫で家族みんなが食べられるおいしい食事を、在宅訪問管理栄養士で介護食アドバイザーの伊藤清世さんが提案する。

病院や介護施設では、咀嚼(そしゃく)の困難な方に、「ムース食」を出すことがある。

ミキサーなどですりつぶした食材を、成形した食事を指す。

舌で押しつぶせるくらいの軟らかさの食事だ。

高齢者のご自宅にうかがっての訪問栄養指導でも、ムース食をご家族と一緒に調理することがある。

「入院中にムース食を提供されていたが、自宅ではどうすればよいか」「ムース食にしようとして、食材と水分を一緒にミキサーでかきまぜても固まらない。どうしたらいいか」などの相談を受けることがある。

「家族と同じ食事を軟らかくしたり、刻んだりしてもうまく食べられなくなった」と相談されてムース食を紹介することもある

このときに使うのは、「介護食用ゲル化剤」だ。

様々な食品をなめらかなムース状にまとめるために使用される。

加熱の必要のない非加熱の介護食用ゲル化剤を使用している。

今回は「介護食用ゲル化剤」を使って、市販のハンバーグをムース状に仕上げていきたいと思う。

ニンジンの甘煮などの付け合わせは、家族と一緒の食事からとりわけることを想定している。

家庭での作り方でかまいませんし、なくてもかまわない。

介護食用ゲル化剤の代わりに、とろみ調整食品でまとまりを作ることもできますが、ゲル化剤を使用したものとは出来上がりが異なります。

ゲル化剤を使用したムース食は、形はありますが舌で押しつぶして飲み込める程度の軟らかさだ。

とろみ調整食品を使用したペースト食は、プレーンヨーグルト程度の軟らかさであり、ムース食ほど強く押しつぶさなくても飲み込める。

どちらも、飲み込みやすさに配慮された食事だ。

ムース食がペースト食よりも優れているということではなく、食べる人の口の機能に応じた食の形態を選ぶことが大切だ。

私は訪問で様々な在宅療養者にかかわる。

「ムース食、ペースト食、軟らかい食材をまとめた食事など、どれだけ多くの食の形態を提案できるか」ということが重要だと考えている。

それによって、食事の幅が広がるのではないだろうか。

皆さんも困ったときには、お近くの管理栄養士さんに相談してみよう。

きっと良いアドバイスがもらえるはずだ。

[作り方]
材料

【 ハンバーグムース 】

(1) 市販のレトルトハンバーグを温め、ざっとソースとハンバーグに分ける。ハンバーグを適当な大きさに切り、お湯とともにミキサーに入れ、なめらかになるまでかきまぜる。

(2) (1)がなめらかになったら介護食用ゲル化剤を加えて1分程度さらにかきまぜる。

(3) バットなどにラップを広げ、ムース状になったハンバーグをミキサーから取り出し、ラップで丸く成形する(底が丸い器、たとえばアイスなどの空き容器を利用してもよい)。常温に冷めるまで数分置く。硬さが安定したらラップを外して、皿に移し、(1)でとり置いたハンバーグソースをかける。

【 ニンジンムース 】

(1) ニンジンの甘煮とお湯をミキサーに入れ、なめらかになるまでかきまぜる。味が薄くなるので砂糖を加えてもよい。

(2) なめらかになったらゲル化剤を加えて1分程度さらにかきまぜる。

(3) ラップを広げて(2)を流し、バットの端などを利用して固める。

(4) ムースの硬さが安定したら、ラップを外し、好きな形にカットし皿に盛り付ける。

【 ブロッコリームース 】

(1) ブロッコリーをゆでる。

(2) ゆでたブロッコリーとお湯をミキサーに入れ、なめらかになるまでかきまぜる。味が薄くなるので塩やコンソメを加えてもよい。

(3) (2)がなめらかになったらゲル化剤を加えて1分程度さらにかきまぜる。

(4) ラップを広げて(3)を流し、バットの端などを利用して固める。

(5) ムースの硬さが安定したら、ラップを外し、好きな形にカットし皿に盛り付ける。

※かむ力、飲み込む力には個人差がある。食べる機能を確認しよう。

参照元:Yahoo!ニュース