オーナーの「特権」を利用 偽情報で米大統領選挙戦かき乱すマスク氏
電気自動車(EV)大手テスラなどを率いる実業家イーロン・マスク氏が米東部ペンシルベニア州バトラーで5日に行われる共和党のトランプ前大統領の選挙集会に初めて参加する。
今年7月にトランプ氏支持を正式に表明して以降、マスク氏は自身が所有するX(ツイッター)の影響力を武器に、虚実ないまぜの情報を発信して選挙戦への関与を深めてきた。
マスク氏は自らを「穏健派の民主党支持者だった」と述べている。
過去の大統領選では民主党を支持し、オバマ元大統領と握手するために6時間並んだこともあったという。
EV普及を推進するバイデン政権で、テスラは消費者向けの税控除などでその恩恵も受けているが、労働組合をめぐる立場などで相反。
マスク氏は2022年の中間選挙では共和党支持を打ち出した。
今年に入ると、マスク氏はXでバイデン大統領の高齢不安や移民政策などに批判を広げ、トランプ氏に肩入れする傾向を強めた。
とりわけ民主党が重視する「多様性、公平性、包摂性」(DEI)の推進を敵視。
自身の子どもの一人が、出生時に割り当てられた性と自認する性が異なるトランスジェンダーであるのは「意識高い系ウイルス」のせいだとも発言している。
一方、マスク氏は個人の自由を最大化し、政府による規制を極力減らす社会像を志向する点ではぶれていない。
22年のツイッター買収も「言論の自由の擁護」の大義名分を掲げたものだった。
マスク氏が経営権を握り、名前を変えたXは広告収益の分配を含むさまざまな機能変更が行われた結果、インプレッション(表示)回数を稼ぎたいユーザーが大量に生まれ「カオス化」が進んだとの指摘が絶えない。
2億人以上のフォロワーを抱えるマスク氏自身のアカウントが言論空間の信頼性を損ねる一因にもなっている。
オンライン上の誤情報・偽情報やヘイトスピーチを監視する非営利組織「デジタルヘイト対策センター」(CCDH)の調査によると、8月上旬時点で米大統領選に絡んで「虚偽または誤解を招く」マスク氏の投稿はXで12億回近く閲覧されていた。
その内容は、民主党の移民政策や選挙の不正に関する誤った主張、生成AI(人工知能)を使ったハリス副大統領の偽動画などが含まれていた。
また、Xには別のユーザーが誤解を招く内容の投稿を訂正したり補足したりする「コミュニティーノート」機能があるが、CCDHの調査時点ではマスク氏の投稿には適用されていなかったという。
マスク氏は、この機能についてXで流れる誤情報に対応する有効な手段だと主張していた。
CCDHのイムラン・アフメド最高経営責任者は「マスク氏は、政治的に影響力のあるソーシャルメディアのプラットフォームの所有者という特権的立場を悪用して、不和と不信を生む偽情報をまき散らしている」と指摘している。
参照元∶Yahoo!ニュース