石破新総裁に金融市場の洗礼、円高に株急落 一過性か期待と不安

円高をイメージした画像

自民党の石破茂新総裁の誕生に金融市場は、株安・円高・金利上昇で反応した。

財政刺激・金融緩和を主張する高市早苗経済安保相の勝利を事前に織り込んでいた反動が強く出た格好だ。

目先はこうした「高市トレード」の巻き戻しがいつ収まるのかが焦点だ。

石破氏の勝利を受けて「株式市場では金融緩和を主張する高市氏に期待が高まっていたことから、いったん悲観的なムードが漂うだろう」と、大和証券の末広徹チーフエコノミストは話す。

総裁選の投開票が進んでいた取引時間中には、リフレ的政策を志向すると見込まれた高市氏の勝利を織り込むような動きが広がった。

石破氏勝利が伝わった直後には「高市トレード」の逆回転が生じて、ドル/円は146円付近から142円後半へと急落。

日経平均の先物は現物終値比で2000円超下落する場面があった。

今晩の海外市場の反応を見極める必要があるものの、週明けは株安で始まるとみられている。

市場では石破氏に対し「緊縮財政を志向するのではないかとの警戒感が根強い。ようやく日本経済がデフレを脱しつつある中で、マクロ経済への悪影響が出ないよう期待したい」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘する。

フランス系資産運用会社コムジェストのポートフォリオマネージャー、リチャード・ケイ氏は「投資家が期待していた結果ではないかもしれず、いったんは弱気のムードとなり得る。経済刺激策が打ち出された中国への資金シフトが生じるかもしれない」との見方を示す。

もっとも、目先の相場反応は過剰反応、との見方もある。

来週の新内閣発足後は、市場の関心は、衆院の解散・総選挙にシフトする。

大和証券の末広徹チーフエコノミストは「野党支持層や無党派層の支持も期待できる石破氏が世論調査で高めの支持率を得ることができれば、結果的に石破氏の政策を評価する声も増えてくるだろう」と予想する。

少なくとも2000年以降の日本株には「選挙は買い」の「実績」がある。

2000年以降に解散は8回あり、日経平均は全勝、TOPIXは7回が株高となっている。

解散前日終値から投開票日直前の終値までの平均上昇率は、それぞれ5.2%、4.1%だった。

「早期解散への思惑が強まれば『選挙は買い』でもあり、株価は一段高を試し得る」としんきんAMの藤原氏は期待を寄せる。

財政運営については、規律を保つ方向とみられているが「総裁選の途中でトーンダウンしたことからしても、今以上に引き締めるというのは世論的にも難しい」と明治安田総合研究所の前田和孝経済調査部エコノミストはみている。

コムジェストのケイ氏は「高市氏や小泉氏が高い支持率を得たことは、新政権でも無視できないだろう。成長戦略への配慮も期待できるのではないか」と話す。

金融政策について明治安田総研の前田氏は、石破氏が強く傾倒している分野ではないとして「日銀の判断に任せるというスタンスだろう」とみる。解散・総選挙の流れとなれば「株安を引き起こすような金融引き締め的な発言も予想されない」と大和の末広氏はみている。

新政権を巡っては、「安定した政策運営が期待できるだろう」(野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)との見方が出ている。

農林中金総合研究所の南武志理事研究員は、石破氏にフレッシュな印象はないとしながら「政治とカネの問題で有権者に自民党は変わったという印象を植え付けるのに適した人選なのではないか」と指摘する。

11月には米大統領選を控えている。

「今後、日米のリーダーが変わることになる。地政学の時代になり、TSMC(の製造拠点設置)も含めて、経済安全保障の分野で日本が注目を集める中、この分野で石破氏の存在感も出てくるのではないか」とBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは話している。

参照元:Yahoo!ニュース