樹木葬、後継者不要で人気 墓との向き合い方に変化「親が子を思う時代に」

樹木葬をイメージした写真

直近5年以内の墓選びで、管理などを寺や霊園に任せる永代供養型の墓を選択した人の割合が5割近くに達したことが、仏壇・墓石販売大手「はせがわ」の調査で分かった。

後継者が不要であることなどが人気で、一般墓を選んだ人の割合を上回った。

墓石代わりに植物をシンボルにする樹木葬が増えているといい、今春に樹木葬の墓地を整備した川崎市の寺の住職は墓との向き合い方の変化を「子が親を思う時代から親が子を思う時代に入ってきた」と表現する。

同社によると、調査は直近5年以内に墓の購入、遺骨を移す改葬を行ったり、これから購入したりする40~70代の600人を対象に今年7月に実施した。

既に購入・改葬した人のうち、樹木葬や納骨堂を含む永代供養型を選択した人の割合は49.7%で、一般墓の49.0%をわずかに上回った。

一方、今後の墓選びで永代供養型を予定・検討していると回答した人の割合は88.3%に達し、一般墓の44.7%を引き離した。

一般墓が代々継いでいくことが前提であるのに対して、樹木葬などの永代供養型は霊園や寺が遺族に代わって管理、供養する。

同社が参考として示す購入価格は屋外の一般墓が140万円以上に対して樹木葬は55万~75万円となり、管理、費用面から樹木葬を選択する人が増えているとされる。

調査結果でも樹木葬を選んだり、検討したりしている理由として最多だったのは「後継者が不要」で73.4%。

次いで「管理が楽」が58.7%となり、「供養スタイルが自分に合う」「費用が安い」「墓参りがしやすい」がそれぞれ33.0%だった。

「昔は樹木葬という言葉さえなかったが、最近ではトレンドになっている」。はせがわの墓石事業に長年携わってきた榎本哲治常務取締役はこう説明する。

利用者だけでなく、寺院側にも檀家離れなどの中で安定的な寺院運営を行うために樹木葬へのニーズがあり、同社は寺院など向けに企画提案と、それらの受託販売の事業に力を入れる。

榎本氏は今期(4月~来年3月)に10カ所で整備する計画であることを明かし、「首都圏だけでなく、地方でもニーズがある」と力を込める。

川崎市高津区の蓮花寺は同社の企画提案のもとで今年4月、樹木葬の墓地をオープンした。

オリーブ、アジサイなどが植えられた敷地内で緩やかなカーブの通路を挟む形で1~4人用の約460区画が設けられている。

永代供養料を納め、年間管理費は不要。複数人タイプの場合、最後の納骨から10年経過したら合祀墓に移される。

寺の飯田盛重住職によると、数年前、檀家から樹木葬への改葬のために離檀したいと言われことなどがきっかけとなり、樹木葬の墓地を作ることを検討。

以前より付き合いがあった同社に相談した。

寺の近くに住む女性(70)は約4年前に亡くなった夫や自身と、次男らのために4人用を購入した。

夫が他界した当時、一般墓について長男夫婦から「墓じまいと言われているし、持たないほうがいい」などと難色を示されて断念し、自宅の仏壇で供養してきた。

悩む中で昨年には他界した友人の海洋散骨に立ち会い、「すごく寂しいと感じ、お父さんの散骨はできない」と思った。

今年に入って蓮花寺の樹木葬墓地整備を知り、申し込んだ。

「管理費もかからず、子供もお参りしやすい」と安堵しているという。

飯田住職は樹木葬が選択される状況について「いまは子供に負担をかけたくない親がその気持ちを強く持つ時代。自分で自分の終活をしていきたいと樹木葬に目を向ける人が多いのではないか」と指摘する。

参照元:Yahoo!ニュース