「畑がなくなる」農家困惑 リンゴの木が腐る「腐らん病」、収穫量国内2位の産地で拡大 過去には廃園続出、原因は農家が減りすぎて

りんごの木を撮影した写真

リンゴの木が腐る病気「腐(ふ)らん病」が長野県内のリンゴ畑で拡大し、昨年の発生面積率(栽培面積に対する病気が発生した畑の面積の割合)が30.6%と2000年に比べて2倍近くに上っている。

県病害虫防除所(須坂市)などによると、農家の高齢化で防除対策が行き届かない畑や、放棄されて感染源となる畑が増えていることが背景にあるとみられる。

現時点で抜本的な対策はなく、国内収穫量2位(2022年産)の産地で関係者が頭を悩ませている。

腐らん病はリンゴの枝や幹を腐らせ、最終的に樹木全体を枯れさせる病害。

糸状菌(カビ)が剪定(せんてい)や摘果、収穫で付いた傷口から感染し、数年の潜伏期間を経て発症するとされる。

胞子は1年を通して飛散し、感染が広範囲に及ぶのが特徴だ。

同防除所によると、県内のリンゴの栽培面積は農家の高齢化などを背景に00年の9453ヘクタールから23年には7095ヘクタールと25%減少する一方、腐らん病の発生面積は1588ヘクタールから2171ヘクタールと36.7%増加。

腐らん病は明治時代にリンゴが国内に導入されて以降、明治末期から大正時代にかけて大発生し、廃園する農家が続出したという。

その後は収束していたが、昭和40~50年代にかけて再び増加。

県の「農作物有害動植物発生予察事業成績」の年報によると、県内では1975(昭和50)年に発生面積率がピークの45.5%に達した。

その後、県は毎月1日を一斉総点検日と定め、感染した枝の処理などを実施。

感染が収まっていった経緯がある。

リンゴの木が感染した場合、枝や幹の発症部分を完全に削り取った上でペースト状の薬を塗るといった処置が必要となる。

処置が不十分だと胞子が飛んで近隣の畑に次々と感染していくため、削り取った樹皮や枝も放置せず完全に処分する必要がある。

腐らん病について調査をしている県果樹試験場(須坂市)は「発見の遅れは致命的で早期発見が重要」とし、丁寧な処置を地道に続けていく必要があるとしている。

「ここも腐らん病になっている」。

7月末、上水内郡飯綱町の下赤塩地区のリンゴ畑。

県長野農業農村支援センター(長野市)が町や地元農家と共に腐らん病の調査に入ると、発症した樹木が続々と見つかった。

地元農家約30軒でつくる赤東園芸組合の関勝則組合長(67)が既に枯れ始めている木や、発症部分の削り取りが甘いために再発した木に目印を付けていった。

「感染した木がゼロの畑はなかなかなく、増えるばかり。対策しないと畑がなくなってしまう」と困惑した表情を浮かべた。

腐らん病が近年増えた大きな原因は、農家が減少し、放置される畑が増えたことだ。

農林水産省の統計によると、県内の販売を目的とするリンゴ農家は2005年の1万6107経営体から20年には9661経営体と4割も減少。

放置された畑が感染源となり、周囲の畑に広がっているとみられている。

特に機械が入りにくい傾斜地にあるリンゴ畑は対策が後回しになりがちだ。

発症部位を削り取って処分し、薬を塗る作業も高齢農家にとっては大きな負担となっている。

県果樹試験場は防除作業の簡素化や、より有効な薬の研究を進めるとしつつ「個人だけでなく、地域で点検していくなどの対策が必要だ」。

県病害虫防除所は栽培の作業性向上も兼ねて「手が入りやすい所に木を固めるなど、対策をしやすくする基盤整備も求められる」としている。

参照元:Yahoo!ニュース