授業料値上げ、京都大学など「現段階ではしない」 東大で検討も「日本の研究力低下招く」と懸念の声
国立大の授業料の在り方を巡る議論が活発化する中、京都新聞社が京都と滋賀の国公立大全10大学に実施したアンケートで、京都大など8大学は現段階で授業料を値上げしない方針であることが分かった。
滋賀大と滋賀医科大は回答しなかった。
各大学からは、国の財政支出を求める意見が多く出された。
文部科学省は国立大の授業料について省令で「標準額」を定め、大学の裁量で標準額の2割まで値上げができるとしている。
東京大が値上げを検討しているとされ、中教審でも授業料の在り方が議論されている。
現在の標準額は2005年に改定された年額53万5800円。京都と滋賀の国立5大学はいずれも標準額と同じ授業料で、公立5大学も国立標準額と同額にしている。
アンケートでは授業料の値上げを検討しているかどうかとその理由、将来的な大学運営の財源確保の在り方を尋ねた。
値上げについては、回答した全8大学が「特段の議論は行っていない」(京大)などと学内での検討を否定。
学生や保護者の負担増を避けたいとする大学が多かった。
将来的な財源については、「授業料引き上げは国立大への受験生を減少させる恐れがあり、中長期的に日本の研究力の低下を招く」(京都教育大)と国立大が日本の研究基盤をなしている現状を踏まえた意見や、「平等な高等教育の機会の提供が公立大の使命。財源負担を学生に求めるのではなく国が財政支出を行うべき」(福知山公立大)と、運営費交付金など国の財政支出に財源を求める主張が相次いだ。
京都府立の2大学は、現時点で授業料値上げの具体的な検討は行っていないとした一方で、将来的な財源確保の在り方として「物価高騰の影響のほか、国の基準や他大学との均衡にも配慮して判断すべきと考えている」(府立医科大)、「経済的な理由で高等教育を受けられないことを回避する一方、自立した財政構造を構築する観点から総合的に検討する必要がある」(府立大)との見解を示した。
滋賀大と滋賀医科大はアンケートに回答せず、「授業料を巡る報道機関の質問に対しては一律で差し控えている」とした。
国立大の授業料引き上げは国立大への受験生を減少させる恐れがあり、中長期的に日本の研究力の低下を招く可能性がある(京都教育大)
・(授業料値上げは)学生や保護者の負担増が避けられず、標準額を上回る引き上げをしないよう経営努力を続ける(京都工芸繊維大)
・(授業料値上げは)物価高騰の影響のほか、国基準や他団体との均衡にも配慮するとともに、ほかの財源の獲得状況も併せて検討する中で判断すべき(京都府立医科大)
・学生や保護者の負担を考えれば、現時点では運営に必要な経費の増加に対しては授業料引き上げより、むしろ運営費交付金の増額で対応すべき(滋賀県立大)
・日本の公的教育費の対GDP(国内総生産)比率は世界的にみて低く、国から教育全般へのいっそうの支援に期待したい(京都市立芸術大)
・平等な高等教育の機会の提供が公立大の使命。財源負担を学生に求めるのではなく国が財政支出を行うべきで、高等教育全般に予算を増やすことに尽きる(福知山公立大)
参照元∶Yahoo!ニュース