子どもが子どもを盗撮 もはや学校は安心できる場所じゃない!身近に迫る「盗撮の実態」子どもを被害者にも加害者にもさせないために

SNSをチェックしている高校生

今、子ども同士の盗撮が全国の学校で増えている。

スマートフォンの普及が低年齢化するなか、“盗撮” がより身近に迫っている。

今年6月、埼玉県春日部市の公立中学に通う3年生の男子生徒たちが、修学旅行先の宿泊施設で入浴していた女子生徒十数人を盗撮し、その写真をSNSでほかの生徒に送信していた疑いが報じられた。

去年12月には、東京・武蔵野市内の公立小学校で、男子児童が授業のために配られたタブレット端末を使い、女子児童が着替える様子を盗撮していたことがわかった。

警察庁によると、去年の盗撮の検挙件数は6933件と、前年(2022年)の5737件より1196件増えました。

そのうち、学校や幼稚園で盗撮が行われたのは169件だった。

2021年までは年間20件程度でしたが、およそ8倍に増加している。

悪質な盗撮被害を少しでも減らそうと、4年前から活動をしているのが、民間ネットパトロール「ひいらぎネット」だ。

代表の永守すみれさんは、盗撮や児童ポルノなどの違法な画像・動画の売買や拡散、自身がアップロードした画像を性的に加工されるなど、嫌がらせ被害などインターネット上でパトロール活動をしている。

きっかけは、SNSで目にした盗撮画像だった。

「盗撮というものは別世界の話だと思っていたのですが、SNSで偶然目にした盗撮画像を見たときに、それまで遠い世界だったものが “今は学校で同級生が同級生を盗撮する” …そういうことが起きているんだって、すごく衝撃だったんですね」

「私も娘が2人いまして、被害に遭っている子が自分の娘の将来に重なってしまったというか、大きくなっていくうちに盗撮被害に遭わない社会にしたいという気持ちが強くなり…自分にできることがないかなと思ったことがきっかけになりました」

インターネット上で発見した盗撮画像や動画に映る制服などの情報から、どの地域の学校で発生した事例であるかを特定し、警察や学校に通報している。

これまで通報した件数はおよそ150件。

若い世代でスマホを持ち、SNSに写真や動画を投稿する若者が多い今、子どもたちが無意識のうちに「盗撮」を目にしてしまう環境になっているといいます。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「例えばSNSだと自分がフォローしている人の投稿だけじゃなく、アルゴリズムで勝手におすすめの投稿を流してくるというような機能がついているものが多くて」

「 中高生ぐらいになると、少しポルノに興味が出てくると思うんですが、自ら積極的に調べようとしなくても、例えば単純にグラビアアイドルの写真が見たいというような使い方をしているときに、同じようなものとして盗撮関係の画像や動画もながれてきてしまうんです」

盗撮に興味がない子どもたちが、簡単に盗撮画像や動画を目にすることで「自分にもできるのではないか」と気軽に捉えてしまうようになるといいます。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「いきなり盗撮してみようって人は少なくて、盗撮画像とか動画を日常的に見ることによって、だんだんと自分もやってみようかなというふうに、フェーズが変わってしまうっていうのはよく見かけます」

最近特に注視しているのは、友人などとメッセージをやりとりするチャットのツール。

若年層を中心に広く利用されています。

掲示板を使って雑談や情報交換が行ったりできる、ごく一般的なアプリだ。

そこには盗撮されたとみられる画像や動画に値段がつけられ売買されていた。

卒業アルバムや友人と撮った画像、また盗撮した画像と一緒に、女子高校生のフルネームなどの個人情報も書かれていた。

友人ではないと撮影できない角度から撮影されているものが目立つ。

また、画像は隠語のハッシュタグをつけて拡散されSNSのコミュニティでやりとりされていることもあるという。

女子高校生を表すJKと一緒に隠語の「鳥」の文字が…。

これは、盗撮の『撮』の訓読み『とる』から転じて『鳥の絵文字』として盗撮の隠語になったのだといいます。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「そうした隠語もすごい勢いで変わり更新されていくので、私たちのようなパトロール活動と常にイタチごっこになっていると感じています」

こうした学校内でしか撮影できないような画像を子どもを使って盗撮させる、つまり、子どもをそそのかし助長しているのは “大人” だった。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「投稿の中には、大人が『盗撮をしてくれたらお金を払うよ』と子どもたちに加害をあおるようなことを言っている投稿や『未成年の子どもの盗撮画像を撮ってほしい、撮るための機材を提供します。買います』などの投稿があり、そうやって大人の誘いに “そそのかされた生徒” が教室内の生徒を盗撮する事態が全国で起きているんです」

「大人にとって、数千円とか数万円のお金っていうのは、そこまで大きくない金額かもしれないですが、アルバイトとかができない中高生にとっては、“大金” になってしまうんです」

学校はもはや “安全な場所” ではないと話す永守さん。

盗撮が行われた後も同じ環境で学び続けなくてはいけない被害者。

学校側の対応に不信感を抱く保護者も多いといいます。

ひいらぎねっとの永守代表によると、学校内での盗撮事件は被害を受けた児童・生徒、その保護者に向けての報告はあるものの、被害者保護の観点などからそれ以外の関係者への詳細な報告がないことから、もしかして自分も被害にあっているのではないかと不安を抱えたままの生徒も多いという。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「私たちも通報活動をしているんですが、実際に通報できて警察が逮捕まで至るっていうのはすごく少なくて、統計に上ってくる数字というのは本当に氷山の一角だっていうことを知っていただきたいです」

そして、肌の露出が多いこの時期、特に夏休み中は、プールの更衣室での定置型カメラによる「盗撮」が多くなることから、いつも以上に注意が必要だという。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「年齢とか関係なく、誰もが被害に遭う可能性があります。小学生ぐらいの頃は全身をすっぽり隠せる“ラップタオル”を使って着替える方が多いと思うんですが、年齢が高くなってもラップタオルなどを使って、身体を隠すようにすると安心です。また普段持っていない方でも、防犯ベルを持ち歩く、防犯アプリをスマートフォンに入れておくといいと思います」

大人よりも子どもの方がネット関係に詳しいという家族も増えている今、こどもを加害者にも被害者にもさせないための手立てはあるのだろうか?

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「スマートフォンやパソコンを与えたら、与えっぱなしではなくて、定期的にどんなアプリを使っているのかとかを話して、どういう使い方をしているのか、親も目をかけていく必要があると感じます」

家族と何でも話し合える信頼関係を普段から築いておき、孤独にさせないことが一番の抑止策になると永守さんは言う。

また、去年7月に性的な盗撮行為をこれまでよりも厳しく取り締まる「撮影罪」が施行された。

これまでは全国一律で取り締まる法律はなく、各都道府県の「迷惑防止条例」で条取り締まってきた。

撮影罪ではわいせつ画像の撮影行為、盗撮画像の提供や保管など、盗撮にまつわる行為全般が処罰の対象になり、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金などが課される。

しかし法律が施行されたからと言って、根絶に向けた大きな動きにはなっていないと永守さんは話す。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「法律は頻繁に変わっていっています。違法だからやってはいけないんだよということではなくて “相手の性的な尊厳を傷つけるようなことはしてはいけない” という基本的な部分を幼いうちから伝えておくことが必要だと感じます」

「そういう服装をしてたから…」「そういう繁華街に言ったから…」と被害にあった人に落ち度があるように言う人もいます。

しかし、そういう言葉があると被害を打ち明けづらくなってしまうことから、永守さんは“加害者が悪い”という当たり前の社会になるべきだと強調する。

ひいらぎネット代表 永守すみれさん「社会全般に関しては、被害に遭った人に落ち度があるんじゃないかとか、そういう服装をしていたからとか、そういう繁華街に行ったから、そんなことになったんだというような “責めるようなことを言う人” が残念ながらいるんです。そういった言葉があると、被害者が被害を打ち明けづらくなってしまうんですね」

「加害者というのは1人だけではなく、何人も加害しているので、被害者が黙ってしまうと、加害がその後も続いていくことになるんです。なので、被害者を責める言葉っていうのは加害者をエンパワーメントしてしまう。加害行為がその後、続くきっかけになってしまう可能性があるので、被害者を批判するのではなく、加害者が悪いということが当たり前の意識になってほしいです」

参照元:Yahoo!ニュース