髙田延彦「心房細動」発症に「はじめは手術が怖くて」今、60代に伝えたいこと

心房細動をイメージした写真

「今まで感じたことがない心臓のリズムの乱れと脈の飛びを突然、長時間にわたり体験しました。痛みはなかったのですが、めまい、ふらつき、胸の締めつけ感があり、『これはおかしい』と思いましたが、一方で『自然に治まるだろう』とも考えていました。しかしだんだん(症状が)ひどくなってしまい、タクシーで病院に行きました」

元格闘家でタレントの髙田延彦さん(62)が「発作性心房細動」を発症した時のことをこう振り返った。

2022年8月に病気が発覚。

その2年後の2024年7月17日、髙田さんは心臓の不規則なリズムの原因になる部位を焼灼する「カテーテルアブレーション手術」を受けて無事にカムバックした。

発症から現在までの体験を本誌に語ってくれた。

「仕事柄、骨折などのケガはしょっちゅうでしたが、入院をするような大きな病気になったことはありません。入院といえばヒザの半月板オペや頭部の外傷などが原因の『脳浮腫』になったときくらいでしょうか。心房細動の発症以前も、リビングで寛いでいるときなどの日常生活の中で脈が飛ぶという不整脈らしき症状はあったんです。だけどすぐに治まってしまう。病院に行こうとまでは全く思わなかったですね」

だが、病魔はゆっくりと髙田さんの心臓に悪さをしていた。

「2022年8月に強い発作が起きて、すぐに病院に行きました。しかしこの病気の厄介なところなのですが、しばらくすると発作が治まってしまうことが多いんです。このときも、病院に着いたら正常な心臓のリズムに戻っていました。それでも心電図や心エコーなどの検査をして、問診などから『心房細動』の診断がくだされました。その日は念のため、1週間分の心電図が記録できるホルターという装置を身に着けて帰宅しました」

すぐにでもカテーテルで手術をするという選択肢もあったが、髙田さんは投薬治療を選んだ。

「いきなり『手術』というのが怖かったこともあり『薬で治るなら薬で……』とリクエストしました(苦笑)。最初は、時間と容量を決めて飲む常用薬と、心房細動は心臓でできた血栓が脳に飛んで脳梗塞を引き起こすリスクがあるので、血液をサラサラにする薬を服用していました。ですが私の場合は発症の頻度が少なかったこともあり、常用薬から症状が出て長く続いたときだけ飲む『頓服』に処方を変えてもらいました。およそ1年、頓服でした。運動で心拍数を上げるとすぐに息があがり、脈が乱れることも多々ありましたが、発作が収まれば、生活はいたって普通でした」

しかし髙田さん自身、心房細動が薬で「根治」できる病気ではないことは理解していた。

心臓のリズムの乱れを感じる頻度はやがて増していく。

「運動もしていないのにドンドンドンと脈を打ったあとに1秒半くらい拍動が止まり、さらに不規則に打つ。そのころになると、運動などでたいして心拍数をあげていなくても脈が乱れるケースが増えていました。最初に心臓の不調を感じてから1年半。症状は徐々に悪くなっていたんです。ドクターからも『この先、発作は月に1回が2回になり、3回になります。不整脈がなくなることはありません』といわれ、私も『脈の乱れをいつも感じながら生活するのは嫌だな。もう、手術を受けるべきなのかもしれない』と決意して都内の病院に入院、手術を受けることにしました」

手術入院は2泊3日だった。

手術当日の朝、血圧や体温などの基本的な検査を受けた髙田さんは、歩いて手術室へ向かった。

「カテーテルは局所麻酔で太ももの付け根から3本、首から1本入れたようですが、手術台に乗ったとたんに入眠処置をされたようで眠ってしまいました(笑)。気がついたら病室。手術時間は1時間半ほどだったそうです。通常は2~3時間かかるそうですが、なぜ私は短かったんだろう。理由は……聞いていません」

カテーテルを差し込んだ傷跡もほとんど目立たなくなった。

傷跡の回復と比例するように、「しばらく薬を飲む必要はありますが、症状を感じることが少なくなった」と髙田さん。

一般的に、1回のカテーテルアブレーション手術で心房細動が治るのは7割と言われている。

残りの3割は再び症状が出てしまい2回目、3回目の処置を受けるのだという。

「手術を受けた安心感と症状が少なくなっている嬉しさで、私はこの1回(のアブレーション手術)で終わりそうな気がしています。ドクターからは『食生活の制限はありません。運動もどんどんやって大丈夫です』と言われています」

国内で100万人いると言われる心房細動を誘発する原因は、加齢、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどのほかに「睡眠時無呼吸症候群」がある。

髙田さんも長く睡眠時無呼吸症候群に悩まされていた。

「心房細動を発症する5年くらい前から症状に気がつきました。妻(向井亜紀さん)から見せられたスマホの動画には、呼吸が止まり、その後に断末魔のようなうめき声を上げながら呼吸を再開する私が映っていました。それを見て、恐怖におののきました。今は機械で空気を鼻から送り込む『CPAP(シーパップ)療法』をおこなっています」

こうした経験を踏まえ、髙田さんは同世代の読者に向け、「還暦(60歳)前後になったら、多かれ少なかれ体に不具合が出るのは当然。できる範囲でいいので、メディカルチェックを受けてほしいですね」と強調する。

インスタグラムで闘病の様子を紹介すると《女房が今日入院して明日やります。カテーテルアブレーション自体が不安ですが、経験者さんのコメントを含めて少し安心しました》《私も4月に心房細動と言われ、なかなか薬が合わず、発作が起きた時はパニックになります!先生からはアブレーション言われてますが、怖くて思いきれません》などといった、赤裸々なコメントが寄せられた。

髙田さんは「私のインスタが、発症して不安に思っている方々の助けになれていたら嬉しいですね」と微笑む。

「平成の格闘王」は、今もまだリングの外で戦いを続けている。

参照元:Yahoo!ニュース