最高益決算の日本企業に影、想定超す円高がリスク 米中景気に不安も

円高の影響を記念している企業

日本企業の4-6月期決算は純利益が過去最高を更新し、株式相場を下支えしている。

好調だった企業業績が失速すれば、今年前半は世界の中で有望な市場と評価されてきた日本株も曲がり角を迎えそうだ。

暴落後も多くのストラテジストは前向きな投資姿勢を維持はしているものの、JPモルガン証券やUBS証券、ゴールドマン・サックス証券などは東証株価指数(TOPIX)や日経平均の目標値を引き下げるなど強気一辺倒ではなくなりつつある。

今回の四半期決算では、中国景気の低迷が多くの日本企業にマイナスの影響を及ぼしていることも明確になってきた。

制御技術のサーボモーターやロボットを製造する安川電機をはじめ、計測機器の島津製作所、化粧品の資生堂などがその代表格だ。

直近発表された統計でも、固定資産投資が予想外に下振れるなど中国経済が低迷を脱却する兆しは見えていない。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「決算の数字自体は円安で輸出が強く、良かったが、中国の状況が厳しいことも見えた。ここは改善に時間がかかるだろう」とみている。

しかし、足元の為替市場では日米金利差の縮小で想定を超える円高が進み、米国や中国経済の不透明感も業績の先行きに暗い影を落とす。

日本銀行の追加利上げに対する警戒や米国での景気後退懸念などから8月初旬に歴史的な暴落に見舞われた日本株。

過去最大の下げ幅を記録した日経平均株価が持ち直す一因となったのは予想株価収益率(PER)の割安感だったが、企業業績に先行き不安が生じ、株式相場の新たな重しになる可能性が出てきた。

三井住友DSアセットマネジメントの木村忠央チーフファンドマネジャーは「ここまでの増益は円安で見栄えが良くなっていた面があった」と指摘。

その効果が薄れれば利益の伸び率も鈍り、「日本企業は元気がないとの受け止めにつながりかねない」と言う。

ブルームバーグの集計では、TOPIX500構成企業の4-6月期純利益は前年同期比9%増の15兆円と過去最高を記録。

同期間の円相場は対ドルで約12%下落し、7月初めには161円95銭と34年ぶりの安値を付けた。

年始からの円安進行がグローバル企業の収益を押し上げたのは確かで、時価総額が国内最大のトヨタ自動車の決算資料によると、同四半期の営業利益で為替変動は3700億円のプラス要因だった。

円高転換でトヨタの業績岐路に、1Q営業利益は市場予想に届かずその後、円は1月以来の一時141円台後半まで反発。

JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、全体の2割程度の企業が想定為替レートを対ドルで150円以上としており、特に外需依存度の高い企業を中心に予想利益を達成するハードルが上がってきているとみる。

ブルームバーグのデータによると、TOPIX500企業の海外売上高比率は全体の45%程度。

内視鏡など医療機器メーカーのオリンパスの今期(2025年3月期)のドルの想定レートは151円、総合化学の三菱ケミカルグループは150円だ。

アナリストの推計では、1円の円高で日本企業全体の利益は0.4-0.6%程度減少する。

中国が不振でも、これまでは米国経済の好調が日本企業の収益を支えてきたが、最近はその米国でも雇用市場の軟化や消費の息切れなどが警戒され始めた。

リブラ・インベストメンツの佐久間康郎代表取締役は「向こう半年を展望すると、米景気が改善することは考えにくい。比較的安定するか、景気後退感が強まるかのどちらか」で、さらなる業績改善を見込むのは難しいとの認識だ。

現時点で専門家の多くも米経済のソフトランディング(軟着陸)や為替の安定を前提に、日本企業の増益基調は続くとの見方を崩していない。

実際、円相場も月初の急上昇後はおおむね145-149円のレンジ内で推移する。

ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジスト、ブルース・カーク氏は今回の決算では市場期待よりも上振れた企業が多く、「今のところ業績へのリスクはないだろう」と言う。

参照元∶Yahoo!ニュース