円高進行は序の口、浮き彫りになるトヨタの問題

自動車を撮影した写真

トヨタ自動車は円高進行の代償を払うことになるだろう。

業界首位で日本最大の上場企業であるトヨタは1日以降、株価急落で時価総額300億ドル(11%)程度が消え、TOPIXの下げ寄与度上位にも入った

しかし、収益を押し上げてきた円安相場の劇的な反転は問題の序の口に過ぎない。

世界的な金利の変調は確実に痛みを伴う。

日銀は7月31日に意表を突く利上げを決定し、さらなる引き上げも示唆。

これが円買いにつながった。

米連邦準備理事会(FRB)は同日に9月にも利下げを行う考えをにじませた。

日米長期金利差の縮小は円高を誘発し、一転して企業収益や株価を下押しするだろう。

ゴールドマン・サックスによると、日本企業は売上高の20%を海外で稼いでいる。

円安は、トヨタ自動車が自ら招いた問題を覆い隠してきた。

同社が1日発表した4─6月期連結決算は営業利益が前年同期比16.7%増の1兆3084億円となった。

為替の円安効果が主に利益を押し上げた。

自動車の量産に必要な型式指定の取得不正行為は自らが招いた頭痛の種の一つだ。

認証不正が6月に発覚し、対象車種の生産を停止したことが響き、4─6月期の日本の販売は20.8%落ち込んだ。

日本市場は昨年の世界販売の約16%を占めた。

国土交通省は7月31日、新たに7車種の不正を認定したと発表。

トヨタに道路運送車両法に基づく是正命令を出した。

一方、トヨタが電気自動車(EV)シフトに出遅れたことが戦略上の課題として残る。

純粋なバッテリー式EVの販売台数は依然として少なく、全体の2%にも満たない。

ハイブリッド車の販売台数はこれよりはるかに多いが、収益を好転させる原動力となるほどの規模はまだない。

認証不正に加え為替相場が株価を押し下げる要因となれば投資家は不正への許容度を失うだろう。

6月の定時株主総会における取締役選任議案での豊田章男会長への賛成率は71.93%にとどまった。

豊田氏は同比率が急低下を続ければ続投が難しくなると認識している。

円高進行は日本企業やトヨタのような大手自動車メーカーに共通する問題であるため、これを言い訳にして決算を取り繕う余地はほぼない。

●背景となるニュース
トヨタ自動車が8月1日に発表した6月までの半年間の営業利益は前年同期比17%増の1兆3000億円、売上高は同12.2%増の11兆8000億円だった。

同社は、日本での生産・販売量が減少しているにもかかわらず、為替レートとコスト削減努力が増益を達成するのに役立ったと述べている。

国土交通省は7月31日、自動車の量産に必要な型式指定の取得不正行為を巡り、これまでにトヨタ自動車から報告があった車種のほかに新たに7車種の不正を認定したと発表した。

国交省は同日、トヨタに道路運送車両法に基づく是正命令を出し、1カ月以内に再発防止策を講じ、四半期ごとに実施の報告をするよう求めた。

参照元:REUTERS(ロイター)