「結婚は?」「転職は?」実家に帰るとモヤモヤ 「帰省ストレス」の対処法を臨床心理士がアドバイス

年末年始に帰省している家族をイメージした写真

体と同じく、ココロも健やかな状態でいたいものだけど、メンタルケアは何かと根性論や「気の持ちよう」で語られがち。

悩みは、実は心理学的なテクニックで対処できるものも多いという。

そこで、臨床心理士の南 舞さんが、読者のお悩みに具体的な対処法をレクチャー。

今回のお悩みは、「実家に帰省するとストレスが溜まる……」という20代女性の場合について。

相談者Yさん:コロナの制限により長らく帰っていなかったことや、久しぶりに地元の友人たちにも会いたいというのもあり、実に3年ぶりに実家に帰省しました。

初日は「おかえり!」とうれしそうに出迎えてくれ、和やかな雰囲気だったのですが……近況を話しつつ、段々と話題は私の将来のことについて。

「転職するなら早い方がいい」「結婚はまだしないのか」などと聞いてくる両親。

両親だけでなく、親戚の集まりの時にこの話題になると、これがまた厄介で。

正直放っておいて欲しいと思ってしまいます。

私には弟がおり、弟にはそんなこと一切言わないのに。

不公平だとも思います。

また、帰省するたびに母から父のこと、職場のこと、ご近所付き合いなどの愚痴を聞かされます。

「こんなふうにしてみたら?」とアドバイスすると、「うーん、でもねぇ……」なんて返されたりして、余計にイライラ。

いつしか実家に帰ることがストレスになってしまい、社会人になってからというもの、帰省の頻度を減らしていたのですが、そんな自分に対しても「親不孝なのかな」と罪悪感。

あと何回両親に会えるか分からないので、会えるうちに顔を見せに行った方が良いのでは?と思う気持ちと、実家に帰ることでストレスが溜まるのは嫌だなぁという気持ちで葛藤します。

どうしたら良いのでしょうか?

臨床心理士・南さん:Yさん、お悩みありがとうございます。

まずは、帰省での家族や親戚への対応、本当にお疲れ様でした。

混雑の中、荷物をまとめて帰るだけでも疲れるのに、なお大変だったでしょうね。

Yさんと同じように、コロナの制限が緩和されたことにより実家に帰省したり、家族旅行をしたりという方は昨年に比べて増えているような印象があります。

楽しかったという声も聞かれますが、その声と同じか、それよりも多い割合で、「楽しさよりも疲労の方が勝っている」とか「イライラしてしまい大変だった」といった声が。

普段と環境が変わることや、いつもと違う人間関係が繰り広げられるなど、心身ともに疲労が溜まりやすく、実は帰省はストレスを感じやすいイベントだと言えるでしょう。

実家に帰省することでの諸々にイライラすると思いつつ、そんな自分に対して「親不孝なのではないか」という疑問や、罪悪感を覚えているというYさん。

そんな心境を思うと、苦しいだろうなぁと思います。

でも、ちょっと考えてみてほしいのですが、それって本当に親不孝なことなのでしょうか?

家族であっても、性格や価値観が違いますし、合わないと思うところや、行動や言動にイライラするのはあり得ること。

なので、Yさんが両親の発言や、お母さんの愚痴に対してムカっとするというのも、自然なことだと思います。

それでも、Yさんが自分に罪悪感を覚えるのは、「家族なのだから理解しなければいけない」といった思考が頭の中にあるからなのではないでしょうか。

家族にまつわる、こうすべき・しなければいけないといった誤解のことを【家族神話】と呼んだりしますが、この家族神話に悩まされる人は非常に多いものです。

もし家族にまつわることで悩んでいる人がいたら、こうした家族神話が自分の中にないか、一度考えてみることで、少し気持ちが楽になるかもしれません。

アサーティブに伝える家族であっても、言われたら嫌なことはありますし、それをガマンしなければいけないということもありません。

Yさんは将来のことについて言われることが嫌だということでしたので、その気持ちは伝えた方が良いと思います。

とはいえ、伝え方には頭を悩ませるものですよね。

そんな時におすすめしたいのが【アサーション】という、自分のことも相手のことも大切にした伝え方。

例えばYさんの場合であれば、「私の将来のことは放っておいて!」よりも、「心配してくれてありがとう。でも、もう大人だから自分のことは自分で考えたいんだ」「心配なのは分かるけど、せっかく帰ってきたんだから、楽しい話がしたいな」というような感じで伝えてみるのはいかがでしょうか?

相手の行動や自分の感情に名前をつけて、距離をとるYさんのもう一つの悩みが、お母さんの愚痴を聞いていてアドバイスすると、「でも……」と返され、それにイライラするということでしたよね。

相手の行動を変えるというのは残念ながら難しいのと、自分の中でイライラを感じないようにするというのも至難の技ではないかと思うのです。

そんな時におすすめしたいのがそれらを擬人化すること。

例えば、お母さんが「でも……」と言い出したら、「あ、でた!デモ星人」と名前をつけて心の中で唱えてみたり、Yさんの中にイライラの気持ちが湧いてきたら、イライラを炎に見立てて、「イライラの炎が大炎上しそうだな」といったように名前をつけることで、感情と距離をおくことができたり、感情に振り回されてストレスが溜まるのを防いでくれるのに役立ちます。

対処法をお伝えしていても、家族が相手だとうまくいかないことも多いと思います。

どうしてもしんどい時は、帰省する頻度を減らしてみたり、直接言いたいことを言うのが難しい時は、メールなどを活用してみたり。

物理的に距離を取りながら関わっていくのは、決して悪いことではないです。

家族であっても合わない人はいますし、一緒にいれば楽しいことだけでなく疲れることや、イライラすることだってあるもの。

自分を責めずに、ストレスを感じずに付き合える距離感を探していけると良いですね。

参照元∶Yahoo!ニュース