南海トラフ監視強化、なぜ1週間 「避難で体調崩したり社会活動の維持が困難に」

防災グッズを携所している人

南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」が初めて出され、気象庁は注意深く地震活動を監視している。

9日時点で異常な変化は観測されていないが、最大級に備え、想定震源域沿いでは引き続き注意が必要だ。

同庁は「すぐに発生する可能性は低いが、この機に防災対策を見直してほしい」と呼びかける。

気象庁の武田清史・大規模地震調査室長は9日夕、記者団に対し、「巨大地震注意」発表後の地震状況を説明した。

同庁は同日夕、南海トラフ地震の想定震源域での地震活動状況を伝える「関連解説情報」を発表。

短期間にプレート(岩板)境界の固着状態が変化すると、巨大地震が起きやすいとされ、同庁は「ひずみ計」で地盤の伸び縮みを監視している。

通常と異なる変化は確認されていないが、武田室長は「注意深く変動を監視していく」と述べた。

今回の巨大地震注意の対象範囲は、茨城県から沖縄県の太平洋側を中心に29都府県707市町村に及ぶ。

南海トラフ地震が起きた場合、震度6弱以上の揺れか、3メートル以上の津波に襲われる可能性がある地域で、政府が2014年に「防災対策推進地域」に指定した。

政府の被害想定では、最大級の南海トラフ地震が起きれば、静岡県から宮崎県にかけた10県で最大震度7の揺れに見舞われる。

津波は最短数分で襲来し、最大34メートルに達する。

死者・行方不明者は23万人以上に膨らむ恐れがある。

南海トラフ沿いでは、直近では1946年に昭和南海地震(M8.0)、44年の昭和東南海地震(M7.9)が起きている。

これまで100~150年間隔で繰り返し大地震が起きており、次の巨大地震の懸念が高まっている。

同庁の評価検討会会長の平田直・東京大名誉教授は「今回のM7.1の地震は、想定震源域の西端で起きたが、ひとたび最大級が起きれば、被害は広域に及ぶ。全域で備えを強化することが重要だ」と訴える。

気象庁は今回、1週間は対象地域の住民らに地震への備えを再確認し、発生後すぐに避難するための準備を求めている。

特段の異常がみられなかった場合、15日の関連解説情報を最後に「大規模地震発生の可能性がなくなったわけではないことに十分に注意しつつ、1週間で注意の呼びかけを終える」としている。

1週間の理由について、政府の中央防災会議で臨時情報の制度設計に携わった福和伸夫・名古屋大名誉教授は、「避難が1週間を過ぎると体調を崩したり、社会活動の維持が難しくなったりすることを考慮した」と明かす。

同庁の束田進也・地震火山技術・調査課長も「自然科学的な見積もりではなく、社会的な受忍限度」と説明し、「必ず発生するわけではないが、この機会に個人レベルでも社会レベルでも防災対策を見直してほしい」と呼びかけている。

参照元∶Yahoo!ニュース