猛暑、五輪テレビ観戦 寝不足に悩むあなたの疑問に日本睡眠学会 内村理事長が回答
記録的な暑さで寝苦しい夜が続く今夏。
パリ五輪も開幕し、選手たちの活躍をテレビ観戦すれば、開催地との時差で寝不足に悩む人はさらに増えそうだ。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の作成に携わった日本睡眠学会理事長の内村直尚・久留米大学長に、五輪観戦のこつや夏でも快適に眠るポイントなどさまざまな疑問に答えてもらった。
Q パリ五輪を真夜中まで観戦しても、翌日の仕事や勉強への影響を小さくする方法は?
睡眠のリズムは崩れるが、最低限の睡眠時間は確保した方がいい。
本来、夜の睡眠はまとめて取った方がいいが、例えば夕食後に少し仮眠して夜に観戦し、就寝するなど眠りを分散させる。
起床時間を普段より遅らせることで成人なら合計6時間は確保したい。
翌日、普段通りに就寝すれば深く眠れるので体調は戻る。
真夜中まで観戦する日は選んで、連日の夜更かしは避けたい。
Q 週末に寝だめすれば平日の寝不足は補える?
週末にゆっくり寝たい人は就寝時間を早め、起床時間は普段通りに保ちたい。
起床を2時間以上遅らせると、時差ぼけと同じ負担を体に与えることが分かっている。
時差ぼけは前立腺がんや乳がん、認知症、高血圧、糖尿病、心筋梗塞など血管障害になる危険性を高めるというデータがある。
死亡リスクが高まり、幸福感は低下する。
土日に遅く起床した場合、木、金曜まで体調が回復しないという報告もある。
Q 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手は1日10時間以上を睡眠に充てることで知られる。よく眠ればトップアスリートになれる可能性が高まる?
陸上短距離のサニブラウン・ハキーム選手も長時間眠るという。
アスリートは1日のエネルギー消費量が多いので、成人でも10時間眠れる人は多いだろう。
長く眠れば背が伸び、頭が良くなり、肌もきれいになり、肥満予防もできるといったエビデンスはたくさん出ていて、大谷選手に少し近づけるかもしれない。
ただ世界で活躍できるレベルにまで達するかは別問題。
それに眠れないまま床に長くいるのは睡眠の質が低下するので、実際の睡眠時間より30分以上長く床に就かない方がいい。
Q スポーツ大会や試験などの開催時間に合わせて力を発揮するには、眠りをどう調整したらいい?
五輪で金メダルを獲得した体操の内村航平さんや競泳の北島康介さんは決勝などが行われる午前9時や10時に体がよく動くように、五輪の半年ほど前から同6時ごろには起床して調整したという。
ここぞという大会や試験に向けて、遅くとも2週間ほど前から睡眠リズムを整えるのは効果があるだろう。
一般に午後2~4時に昼の眠気が訪れるので、午後に力のピークをもっていきたい場合は昼食後などに30分程度の仮眠がお勧めだ。
Q 熱帯夜でもよく眠るにはどうすればいい?
室温が28度を超えると睡眠の質が低下することが分かっている。
夏は22~27度のうち暑くも寒くも感じない程度に調整するといい。
タイマーでエアコンなどの電源が切れるよう設定すると、夜中に室温が上がって熱中症になるリスクが上がったり目が覚めたりする。
熱帯夜の日は朝までつけ続けた方がいい。
湿度は60%ぐらいが最適だ。
熱中症を予防するとともに排尿で眠りを妨げないようにするため、寝る前の水分補給は100~200cc程度。
夏に限らず寝ながらよく汗をかくので短パンなどよりも吸湿性、通気性の良い長袖、長ズボンのパジャマが理想的だ。
Q 質の良い睡眠を取るポイントを総括して。
寝る前はリラックスするよう静かな環境を整える。
就寝の1時間ほど前に入浴し、ぬるめの風呂に20分ほど漬かりたい。
アルコールやカフェインは深い眠りを妨げるので控える。
スマホや液晶テレビ、LED照明などのブルーライトはメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制し眠りの妨げになる。
仕事などでスマホを見る必要がある人は、画面をオレンジ色などの夜間モードに変える。
成人は6時間以上の睡眠を取るため、午前6、7時に起きる人は遅くとも同0時に床に就く。
朝は一定の時刻に起床し、光を浴びることで体内時計をリセットする。
朝食を取るのも体内時計のリセットに有効で、規則正しい食事が大事だ。
規則的な運動も効果的だが、ジョギングや水泳など激しめの運動は就寝の3、4時間前に終わらせる。
寝る前はストレッチやヨガなど緩やかなものに限る。
30分程度の昼寝もお勧めだ。
睡眠が不十分な人は午後2時ごろに眠気が訪れるので、昼寝で午後の活動性を上げると夜もぐっすり眠れるようになる。
Q 盛りだくさんだが、特に大事なことは?
朝は一定の時刻に起きて光を浴び、朝食を取ることが基本。
さらに自分ができる範囲で、これらのポイントを押さえてほしい。
参照元∶Yahoo!ニュース