ゼロカロリー飲料は飲ませてよい?甘い飲み物の適量は?子どもの飲み物にまつわるお話

ゼロカロリー飲料をイメージした写真

先日、「水が飲めない子どもが増えている」、というニュースが話題となった。

水だけでなく、味のない飲み物が苦手というニュースは、ちょうど熱中症のリスクが懸念される時期でもあり、大きな話題になった。

最近はとにかく暑い日が続いている。

熱中症警戒アラートが連日発令され、外に出ると身の危険を感じるほどだ。

そのような状況では、体は中にこもった熱を外に逃がすために、毛細血管という細かな血管を広げ、体内の熱を血流に乗せて皮膚の表面に集めて熱を外気に逃がそうとする。

つまり体内の熱を外に移動させるためには血液の流れが重要だ。

血液の流れをスムーズにするためには十分な水分摂取が必要だ。

これが熱中症予防に水分摂取が必要な理由だ。

よく保護者の皆さんから聞かれる質問に、「熱中症予防ではORSが必要なのか?」というものがある。

熱中症の治療では、水分が摂れる場合、電解質を含む経口補水液(ORS)や薄めたリンゴジュースなどが推奨される。

ただ、熱中症の予防としては、基本的には普通の水やお茶で十分だ。

10代の子どもの場合、暑い環境で通常15-30分毎に240ml程度の水を補充するのが望ましいとされている。

これは量としては結構多く感じられるかもしれない。

それだけに、この暑い時期、保護者としてはしっかり水分を摂ってくれないと心配だ。

飲み物に味がついていると、子どもが飲んでくれる水分量が増える。

暑い環境下で子どもたちの飲水行動が飲み物の種類によってどのように変わるのかを調べた研究がある。

この研究では通常の無味無臭の水を与えられた場合よりも、フレーバーを加えた水を与えられると、子どもが摂る水分量は増え、特にグレープフルーツ味がもっとも効果が高く、味のない水と比べて飲む量が44%増えた。

さらに、甘いスポーツ飲料を与えられた場合、飲む量は通常の水と比べて91%増えていた。

子どもたちは普通の水よりも、飲み物にフレーバーが添加されていたり、甘い味がついている飲み物の方が好きだ。

子どもたち自らが進んで水分を摂ってくれると保護者も安心ですので、ついつい甘い飲み物を与えてしまうことが減る。

ただ、フルーツ飲料や甘いお茶、糖分を含むソーダは肥満発症に大きく寄与していることも分かっている。

また、これらの飲み物を摂取することで牛乳などの摂取量が減り、主要栄養素(カルシウムなど)の摂取量が下がることも指摘されている。

特に暑い時期には必要となる水分量が多いので、甘い飲み物で水分を補おうとすると、過剰な糖分を摂取することになる。

そこで欧州小児消化器学会は声明を出し、乳児や小児、青少年はソフトドリンクやそのほかの甘味飲料の摂取を控えるべきとしている。

アメリカ小児科学会もスポーツドリンクとエナジードリンクは糖分を多く含むため、日常的に摂取しないようにと注意喚起している。

それでは、子どもの甘い飲み物の適量とは具体的にどれくらいなのだろうか。

いくつかの文献を元に子どもの飲み物の推奨とその量について表にまとめた。

5歳以下のお子さんには基本的に糖分を含む飲み物は推奨されていない。

飲ませるなら100%果汁飲料ですが、それも量に留意する必要がある。

カフェインについては、缶コーヒー1本(190ml)が約100-150mg、ペットボトルの緑茶(500ml)1本が50mg、エナジードリンク(250ml)1本が約100mgなので、こちらも小学生以上は注意が必要だ。

この表をご覧になった方の中には結構厳しいのでは、という意見もありそうだが、ご家族で話し合う際の一つの参考になればと思う。

さて、上の表ではゼロカロリー飲料について触れている。

ゼロカロリー飲料というのは、砂糖の代わりにサッカリンやアステルパームといった人工甘味料が加えられている飲み物で、最近ダイエット志向もあり人気も高まっている。

どう考えればよいのだろうか。

砂糖が入っていないなら問題なく子どもにもおススメできそうに思われるかもしれない。

この分野は現在様々な研究がなされており、これまでに分かってきたことを簡単に説明する。

まず、これらの飲み物の利点として、口腔内の微生物によって酸に代謝されないため、砂糖の入った飲み物と比べると虫歯リスクが下がることが指摘されている。

一方で、これらの飲み物は潜在的に甘いものを好む嗜好ができやすいことも指摘されている。

成人の研究では、人工甘味料を摂取した人は、摂取後に塩辛いスナックよりも甘いスナックを好む傾向が高まることが報告されている。

他にも満腹感が得られることで他の栄養素の摂取が不十分になるリスクなども指摘されている。

成人では結局肥満のリスクや2型糖尿病、冠動脈疾患などの慢性疾患リスクの軽減にはつながらないとして、世界保健機関のガイドラインでもこれらの人口甘味料の利用は推奨されていない。

したがって、ゼロカロリー飲料なら問題ない、という結論にはならなさそうだ。

無味無臭の水よりも味のついている飲み物の方が好まれるのはこれまでの研究からも明らかだが、熱中症予防に限らず、代謝が盛んな子どもは多くの水分補給が必要だ。

味のない水や麦茶などをちゃんと飲める習慣を作ることは、その子の将来の健康を守ることに繋がっていくと考えている。

参照元∶Yahoo!ニュース