彼氏は音信不通、親からは暴力 「死にたい」ひとりぼっちの妊婦を救ったのは?

妊婦を撮影した写真

誰にも頼ることのできなかった妊婦が、生まれた赤ちゃんを遺棄したり殺害したりする事件が、後を絶たない。

「0歳0か月0日」死亡は、生まれたその日に亡くなったことを意味している。

国の調査では、「0歳0か月0日」での死亡が約20年間で176件も起きているという数字も。

行き場のなくなってしまったある妊婦と、自宅で妊婦を受け入れる活動をしているアメリカ人女性に密着した。

2024年4月、名古屋市千種区の東部医療センターで検査を受ける20歳のあやさん(仮名)。

妊娠10か月で出産を間近に控えている。

妊娠が分かったのは2023年9月だが、相手の男性は多額の借金について口論になった後、一緒に暮らしていた家を出ていった。

(あやさん【仮名】)「総額200万円ぐらい。借金の癖が直らなくて。出て行ったきり、連絡先も全部消されて。電話番号とか全部、無くなっていました」

一人になったあやさんは、親にも頼ることはできなかったそうです。

(あやさん【仮名】)「両親から働いていたお金をとられたりとか、暴力されたりとか、度々あって。頼れる存在はいなくて。相談出来る人も特にいなくて、ずっと一人で。毎日毎日一人で悩みながら、死にたい死にたいと思っていた」

あやさんを救ったのは、あるアメリカ人の女性の家だ。

名古屋市中川区に住むキリスト教宣教師シンシア・ルブルさんは、誰の助けもない妊婦を支援する活動を続けている。

行政機関の紹介で、あやさんは2024年の2月末から、シンシアさんの家で暮らし始めた。

(シンシア・ルブルさん)「困っている妊婦さんが住む場所がなくなったら、一緒に住もうと思っただけ。『一番弱い者を助けなさい』というのがキリスト教の考え方。まだ産まれていない赤ちゃんが一番弱いし、妊婦さんもすごく困っている。何か小さなことでも、できればやりたかった」

シンシアさんは24年前、キリスト教の宣教師として来日。

一人で相談相手や住む場所に困っている妊婦がいることを知り、自宅で一緒に生活しながら出産を支援する活動を始めた。

運営費用は、教会や個人の寄付金などで賄われている。

相談の電話は、毎日のように寄せられるそうだ。

これまで、一緒に住んだ女性は90人近くにのぼる。

(あやさん【仮名】)「シンシアさんは、すごく年が離れたお友達。シンシアさんがいてくれたから変われている。すごく気持ちも楽になって、明るい人間になれたのかな」

あやさんは、シンシアさんにもらった服を赤ちゃんに着せるのが楽しみという。

2024年5月。あやさんは、3940グラムの元気な女の子を出産した。

(あやさん【仮名】)「本当に幸せです。生まれてきてくれてありがとう」

そして1か月半が経ち、あやさんは生まれた娘と一緒に愛知県内の母子生活支援施設に引っ越しした。

(シンシア・ルブルさん)「頑張ってね」

(あやさん【仮名】)「頑張ります。また来ます」

引っ越ししてから数日後。

あやさんは、2人の生活を順調に始めていた。

(あやさん【仮名】)「(娘は)本当によく寝ます。娘には苦労させないような『ママだけでも楽しい』と思ってもらえる生活を送っていきたい」

長年支援を続けてきたシンシアさんですが、60歳を過ぎて、そろそろ後継者のことも心配になっているそうだ。

そんな中、28歳の女性・宮内真喜子さんが2024年4月から一緒に暮らし始めた。

宮内さんは、障害のある子どもの支援をしながら、シンシアさんの手伝いをしている。

しばらくここで暮らし、活動を引き継ぐかどうか決めるつもりだ。

(宮内真喜子さん)「必要な働きなんだということが、少しずつ分かっている。どういうふうに続けていったらいいのかを、もっと考えないといけない」

あやさんが引っ越しした後も、相談の電話はかかってきている。

(シンシア・ルブルさん)
「困っている妊婦さんがいる。あなただけじゃない。妊娠は人生が終わったということではない。人生が始まります。部屋が空いているので来てください。楽しい場所です」

参照元∶Yahoo!ニュース