パリオリンピック選手村に初の「心のケア」スペース、SNS中傷など対応 大坂なおみら苦しみ注目

パリオリンピックをイメージした写真

26日に開幕するパリ五輪で、国際オリンピック委員会(IOC)や日本オリンピック委員会(JOC)が、選手たちの「心のケア」に本腰を入れる。

国民の期待を背負う重圧に加え、SNSへの悪質な投稿によるプライバシーの侵害や人種差別、性的な偏見などでアスリートが精神的に傷つき、追い詰められるのを防ぐためだ。

選手村に相談に応じる拠点を設けて専門家を配置し、SNSの中傷対策も強化する。

パリ郊外で選手ら約1万4000人が過ごす選手村。

敷地内北部のフィットネスセンター2階に「マインドゾーン」と名付けられた約400平方メートルのスペースがある。

極度の不安や緊張に襲われたり、SNSで中傷されたりした選手の「駆け込み寺」として、IOCが五輪で初めて開設した。

専門スタッフが常駐して悩みや不安を聞き、さらにサポートが必要な場合は専門家に橋渡しする。

施設は23日に報道陣に公開され、選手がリラックスできるように照明を抑え、静かな音楽が流れる空間が披露された。

VR(仮想現実)ゴーグルを装着し、心が落ち着く映像を見られるコーナーもある。

アスリートの心に不調が生じる要因は、重圧や技術的な不振、ライバルとの関係など様々。

近年はSNSで誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たず、特にスター選手は標的にされやすい。

IOCの担当者は「誰もが手軽に使えるサービスを提供することで、心の健康の重要性を世界に広められる」と話す。

さらにIOCは、出場選手のSNSに投稿された暴言などを人工知能(AI)で検知する仕組みを導入。

35以上の言語に対応し、24日から「監視」する。

日本選手団も前回の東京五輪で被害が相次ぎ、JOCは今大会、対策を強化した。

選手村にIOC公認の「セーフガーディングオフィサー」1人を相談窓口として常駐させ、男性の精神科医、女性の臨床心理士ら有資格者3人と連携して選手たちをケアする。

悪質な投稿はSNS事業者に削除させたり、警察に相談したりする方針。

選手らには5月以降、大会中にSNSの投稿を控え、メッセージが届かない設定にするなどの対処法を伝えている。

アスリートの心のケアが重視されるようになった契機は、今大会も出場するテニスの大坂なおみ(26)が2021年5月、うつ病の症状に悩んだことを告白し、全仏オープンを途中棄権したこと。

東京五輪では、体操のスター選手、シモーン・バイルス(27)(米)が心の健康問題を理由に個人総合決勝などを棄権し、世界的にクローズアップされた。

各国・地域も選手のサポートに取り組んでおり、JOCの鈴木和馬セーフガーディングオフィサーは「米国は選手村の外にも専門家約10人を置いてバックアップする」と説明。

「非日常の環境で、極限の精神状態で戦う選手たちのメンタルケアは今後ますます重要になる。試行錯誤しながら、日本もしっかりとした態勢を築きたい」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース