北海道内でスズメバチ急増!? 暖冬の影響で駆除依頼過去最多に 広がる生息域、人と鉢合わせ

スズメバチを撮影した写真

北海道内の害虫駆除業者に6月以降、スズメバチの駆除依頼が殺到している。

28社が加盟する北海道ペストコントロール協会(札幌)には同月、記録が残る過去17年間で最多の387件の相談が寄せられた。

暖冬で女王蜂が越冬する確率が高まったほか、エサとなる昆虫が豊富になり、スズメバチが急増しているとみられる。

7月20日には道東の公園で17人が刺される事故も起きており、同協会は不用意に巣を刺激しないよう呼び掛けている。

6月下旬、札幌市西区の一軒家。

約4メートルの庭木に直径7センチのスズメバチの巣ができていた。

住民の高齢男性から依頼を受けた駆除業者「札幌サニター」(札幌)の種田直人社長(47)は防護服に身を包み、殺虫剤を慎重に巣の中へ噴射。

巣が静まるのを待ち、手早く木から巣を切り離した。

巣にいたのは女王蜂と幼虫のみで、駆除もわずか数分で終わった。

「働き蜂が羽化する前でよかった」。

種田社長は胸をなで下ろした。

7月以降は羽化した働き蜂が攻撃してくるため、駆除がより難しくなるという。

道ペストコントロール協会は毎年6~9月にハチ駆除依頼の専用ダイヤルを開設。

今年6月1~30日には前年同月比266件増の387件の相談があり、うち245件で駆除に至った。

駆除件数も過去最多で、前年同月の約3倍に当たる。

種田社長は「今年は異常に多い。7月以降はさらに増えるのではないか」と予測する。

7月20日には十勝管内芽室町の公園にあるテニスコートで17人がハチに刺されて軽傷を負う事故が発生。

ハチはスズメバチの一種だったとみられ、コート近くの排水口にあった巣が駆除された。

道内では昨年7月にも、苫小牧市で幼稚園児9人がスズメバチに刺される事故が起きている。

なぜ北海道でスズメバチが増えているのか。

ハチ類に詳しい玉川大学術研究所(東京)の小野正人所長(64)は、越冬に成功した女王蜂が多かった可能性を指摘する。

女王蜂の幼虫は例年11月ごろ、巣を離れて土の中などで1匹で越冬するが、昨冬の道内は、札幌市の1月の平均気温が過去最高の氷点下1・2度となるなど記録的な暖冬だったため、途中で死ぬ個体が少なかった可能性があるという。

さらに道内に生息する14種類のスズメバチのうち、生ごみを食べるなど広い食性を持つケブカスズメバチが都市部で生息域を広げており、小野所長は「人間の生活圏とスズメバチの生息域が近づき、人とハチの鉢合わせが起きている」と指摘する。

道立衛生研究所(札幌)の伊東拓也研究員(63)は、都市部周辺の畑で無農薬栽培が広がり、ハチの幼虫のエサとなる昆虫が豊富になったこともスズメバチが増加している要因とみる。

都市部には民家の軒下や壁の内部、床下など巣づくりに適した場所も多く、スズメバチの天敵であるクマが山中に比べて少ないことも生息数の増加に拍車を掛けているという。

スズメバチに刺されると、痛みやかゆみを伴って腫れることが多い。

過去にハチに刺された経験のある人は再び刺されると、じんましんや血圧低下、呼吸困難など「アナフィラキシーショック」と呼ばれる重篤な症状が出て、最悪死に至るケースもある。

自分でハチの巣を駆除しようとして刺される人は毎年後を絶たず、興奮したスズメバチに手が付けられなくなってから、道ペストコントロール協会に駆除を依頼する人は多い。

同協会は「巣を見つけても自分で駆除しようとせず、すぐに専門業者に依頼してほしい」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース