マードック氏の新タブロイド紙、ニューヨーク・ポスト流の報道姿勢をカリフォルニアへ

米タブロイド紙ニューヨーク・ポストで知られている「トップレスバーで首なし遺体」のようなタイプの見出しがカリフォルニア州にまもなく登場する可能性がある。
ルパート・マードック氏が率いるニューズ・コープがほぼ15年ぶりに大規模な日刊紙を西海岸で展開しようと準備中なのだ。
ニューズ・コープの傘下にあるニューヨーク・ポスト・メディア・グループの最高経営責任者(CEO)兼発行人のショーン・ジャンコラ氏によると、ロサンゼルスに本社を構える「カリフォルニア・ポスト」紙の発行を2026年初めに開始する。
カリフォルニア報道業界の専門家によると、地元紙のロサンゼルス・タイムズが購読者と人員の減少のために経営状況が芳しくなく、カリフォルニア・ポストがこうした状況を機会に売り上げを伸ばそうと考えているという。
ジャンコラ氏はインタビューで、カリフォルニア・ポストが「常識的なジャーナリズム」、セレブ・エンタメ関連ニュース、スポーツ報道を組み合わせてモバイル端末・デスクトップ端末や音声・SNS・紙媒体など複数のプラットフォームで提供すると語った。
「われわれのブランドに関心を持つ読者層が存在している」と述べた。
関係者によれば、ニューズ・コープ名誉会長のマードック氏はカリフォルニア市場に可能性を見出しこの新事業を承認したという。
ニューズ・コープが米国内で前回創刊した日刊紙は2011年にiPad向けに立ち上げたデジタル新聞「ザ・デイリー」だったが、翌年に廃刊となった。
ロサンゼルス・タイムズの広報担当者は、カリフォルニア・ポストに関するコメント要請にすぐに回答しなかった。
カリフォルニア報道業界のベテランで、サンフランシスコ・スタンダードやIT業界誌インダストリー・スタンダードを創設した元ロイター編集者のジョナサン・ウェーバー氏は、カリフォルニア州の新聞が主流派のジャーナリズムにこだわっているとし「攻撃的で、右派寄りで、センセーショナルな報道スタイルに伸びしろがあるかもしれない」と述べた。
しかし、ウェーバー氏はカリフォルニア・ポストもまた課題に直面していると指摘した。
ニューヨーク・ポストは地下鉄に乗る前に売店でタブロイド紙を買う読者に人気があるが、カリフォルニアの人々は概して車通勤だと語った。
ジャンコラ氏によれば、ニューヨーク・ポスト・メディア・グループはセレブ情報に特化した「ページ・シックス」、エンタメ・ポップカルチャーガイド「ディサイダー」、そして主要ウェブサイトを含めた3つのデジタルブランドを通じて、紙媒体よりもオンラインの方が読者の到達度がはるかに高いという。
ジャンコラ氏はニューヨーク・ポストが22年にこうした読者層の収益化と「無駄のない」ニュース運営によって黒字化を達成したと述べた。
カリフォルニア州を拠点とする地域ジャーナリズム団体「ルックアウト・ローカル」のケン・ドクターCEOは、ニューヨーク・ポストがカリフォルニア向けにただブランドを再構築するだけで読者と広告収入を拡大できるだろうと述べた。
カリフォルニア州はリベラル派の政治家が支配しているが、前回の大統領選は38%がトランプ氏に投票しており、特定の読者層のニーズを満たすこともできるだろう。
ドクター氏は「保守的な文化メディアに居場所があり、大衆迎合主義的な人や大衆迎合的な時代に合致した居場所がある」と語った。
参照元:REUTERS(ロイター)