東電HD、特別損失9030億円計上 デブリ取り出し準備費用で

東京電力ホールディングス(HD)が31日発表した2025年4~6月期連結決算は、最終(当期)損益が8576億円の赤字だった。
前年同期は792億円の黒字。
福島第1原発1~3号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しに向けて9030億円の費用が必要になり、賠償費用519億円と合わせて9549億円の特別損失を計上したのが主因だ。
四半期の最終赤字としては、福島第1原発事故直後の11年1~3月期(約1.4兆円)に次ぐ規模となった。
26年3月期の業績予想は、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働時期が見通せないことから引き続き「未定」としたが、通期の最終損益も巨額赤字に陥る恐れがある。
東電HDは福島第1原発事故後、毎年2600億円を目標に廃炉費用を積み立ててきた。
現在の積立額は7000億円程度で、25~27年度に支出が見込まれる作業費用は約7217億円。
東京都内で記者会見した山口裕之副社長は「当面は廃炉に関わる費用は問題ない。今の積立金の中で進めていける」と述べ、巨額赤字の計上も「廃炉の進捗(しんちょく)を示すものだ」と強調した。
東電HDによると、3号機のデブリの取り出し作業を一部見直したことにより、放射線量を低減する範囲の拡大や、原子炉内部の調査、作業の妨げになる構造物の撤去などの追加作業が必要になった。
1、2号機でも同様の作業が想定されるという。これらに12~15年かかる見込みで、本格的な取り出し作業の開始時期は30年代初めから37年度以降にずれ込む見通し。
今回計上した9030億円の特別損失は、これらの追加作業にかかる費用を見積もった金額だ。
ただ工法は未定で、必要な設備などの費用も含まれていないといい、今後も費用が膨らみかねない。
政府が見込む廃炉費用は総額8兆円。
このうち東電HDはこれまでに約2兆円を投じたほか、約1.6兆円の見積もりを終えている。
今回、特別損失として計上した9030億円を加えれば、全体の半分強の内訳が明らかになった形だ。
ただ、今回の特別損失の計上により純資産は2兆8613億円に減少し、自己資本比率は3月末時点より5.8ポイント低い19.3%に下がった。
投資余力が十分とはいえない中で、今後の資金調達にも影響が出る可能性がある。
参照元:Yahoo!ニュース