住宅ローン「低金利」の強み薄れたネット銀行、日銀の支援終了で戦略練り直し 商品多角化で顧客獲得図る

住宅ローンをイメージした写真

低金利の住宅ローンで人気を集めてきたネット銀行が、貸し出し戦略の練り直しを迫られている。

「金利ある世界」の本格化に加え、日本銀行が低金利で金融機関にお金を貸す貸出増加支援制度による新規貸し付けが6月末で終了し、資金を集めにくくなるためだ。

各行は金利引き上げのほか、ローン期間の長期化など商品の多角化で顧客獲得を図っている。

日銀が2013年から始めた大規模金融緩和で超低金利が続いたことを背景に、ネット銀は大手行と比べて低い金利を提供し、住宅ローン市場でのシェア(占有率)を高めてきた。

ニッセイ基礎研究所の福本勇樹氏の推計によると、ネット銀を含む「その他の銀行」のシェアは14年3月末の3%から、25年3月末に12%と4倍に拡大した。

他方、メガバンクなど大手行のシェアは36%から24%に縮小している。

実店舗をほとんど持たないネット銀は固定コストが低い上、貸出増加支援制度を積極的に活用して低金利競争をけん引。

ところが、足元ではこうした流れに変化が起きている。

ネット銀大手のauじぶん銀行は6月、住宅ローンの変動金利の優遇幅を2.111%から2.061%に縮小した。

基準金利から優遇幅を差し引いた最優遇金利は0.05ポイント上昇の0.78%になった。

4月に基準金利を上げたのに続き、新規契約者にとって事実上の金利引き上げとなる。

同様の動きは、低金利で人気を集めていたネット銀全体に広がっている。

住宅ローン比較サイト「モゲチェック」によると、ソニー銀行や住信SBIネット銀行なども含めたネット銀7社の住宅ローンの最優遇金利は昨夏にメガバンクを上回り、今年7月時点でメガバンクよりも0.101ポイント高い0.783%となった。

メガバンクが高い資金調達力を背景に金利を維持していることも影響している。

貸出増加支援制度の終了に伴う影響について、銀行業界に詳しい日本大の杉山敏啓教授は「大手行も制度を利用してきたが、ネット銀の方が依存度が高く、制度終了の影響が大きい」と指摘する。

低金利の強みが薄れたネット銀は、金利以外で新規契約者にアピールする取り組みを活発化させている。

auじぶん銀は4月、住宅ローンの借り入れに加えて普通預金に預け入れをすると、預金額に応じてローンの利息の一部を現金で「還元」するサービスを始めた。

楽天銀行やPayPay銀行は、借入期間を一般的な35年から50年にのばしたプランを導入している。

返済総額は大きくなるが、月々の返済額を抑えやすくなり、大手行にない特徴を打ち出して若年層の取り込みを図っている。

夫婦で契約を結ぶペアローンで、配偶者が死亡した際の保障内容を拡充する動きも出ている。

これまでネット銀にシェアを奪われていた大手行では、三菱UFJ銀行が24年10月、他行が金利引き上げに動く中で新規契約者の最優遇金利を据え置いた。

モゲチェック運営会社の塩沢崇取締役は「ネット銀と大手銀の資金調達力の差は今後、一段と明らかになるだろう。ネット銀が競争力を保つには、金利以外の差別化も欠かせない」と指摘している。

参照元:Yahoo!ニュース