顔写真がネットで拡散、勝手なイメージで揶揄され アンゴラ村長(31)が明かす、“容姿いじり”に抱く本音「すごく嫌」「私は生まれ持った顔で生きているだけ」

マイクを撮影した写真

「気楽に喜べたのは一晩だけでした」。

芸人になりたてのアンゴラ村長を一夜にしてスターダムに押し上げたブレイクはすぐさま彼女を苦悩の日々へと突き落とした。

テレビでの容姿イジリとSNSでの苛烈な誹謗中傷、「女が嫌いな女」のレッテルと「白亜紀のお笑い」をアンゴラ村長はどう乗り越えたのか。

――昨年デジタル写真集『151センチ、48キロ』を出された時の反響って、ご自身が予想されていたものでしたか?

アンゴラ村長さん(以下、アンゴラ):いや、全く予想してなかったです。本当に7冊しか売れないと思っていました。

――なぜ7冊(笑)。

アンゴラ:家族と友達でいいとこ7冊かなと。でも「今、3000冊売れてます」「6000冊です」「1万冊超えました」と連絡が来て。デビューした時のネガティブな経験があるので「世間って怖いな」「大きい反響って怖いな」という気持ちがあったんですね。でも写真集が一番大きい反響で、しかもうれしい反響というのが、初めてだったかもしれないですね。

――かつて女性芸人さんが身なりを整えるような行動を取ると、周囲からいろいろなことを言われてきたとインタビューなどでもよく聞いていたのですが、写真集を出したことで「芸人なのにそんなことを」などと言われることはなかったですか。

アンゴラ:これがビックリすることにあんまりなかったんですよね。たしかに私が8年前に『キングオブコント』で準優勝した時は「アンゴラは女性芸人のくせにかわいこぶってる」とかそういうことは言われていたみたいです。

写真集を出したら何か言われるだろうなと覚悟はしていました。「でも、7冊しか売れないんで大目に見てくれるだろう」みたいな気持ちもあった。

――7冊への信頼がすごい(笑)。

アンゴラ:で、出したら、別にそんなにネガティブな意見はなかったらしくてほっとしてます。

――やっぱり時代が少しずつ変わってきているのかもしれませんね。

アンゴラ:そうかもしれないですね。今回の写真集でも普通に「素敵だから買います」って言ってもらえる。

ただ、SNSで私の写真と他の女性の写真を張り付けては「女が思う女ウケはこっち、女に嫌われる女はこっち」って、私を「女に嫌われる女」の見本として勝手に使われるみたいなことが半年に1回くらいあったんですよ。

――結構な頻度ですね。

アンゴラ:リプライで「やめてください」って言おうか悩んだんですけど「ダメだ。私は人を笑顔にするためにSNSやってるんだから」「これを引用したら見てる人が嫌な気持ちになっちゃう。私は別にそんなことをするためにこの仕事をしているわけじゃない」って、思い直して、私熱い女なんで(笑)。そのことはずっと言わないでいたんです。

でもあまりにも多いから「いいや、一回言っちゃおう。ごめん」と思いながら注意喚起はしました。

――それは肖像権の侵害とか、そういう問題にもなってきますよね。

アンゴラ:そこはすぐ、こたけ正義感に相談しました(笑)。

――同じ事務所に強い弁護士が付いてる(笑)。

アンゴラ:それで、「こういうので勝手に写真使われるのすごく嫌です」とSNSに投稿したんですが、それに関しても「芸人なんだから面白く返せよ」とかあるかなと不安だった。でも私の体感だと100分の3ぐらいというか。

「芸人のくせにこんな真剣になって」という意見は本当にちょっとで、ほとんどは「そうだよね。芸人でもこういういじり方されて、それを面白く返せって、そんなの厳しい。そんなケンカは買わなくていいよね」という意見であふれていて。その時に世の中変わりつつあるなと思いました。先輩女性芸人さんが道を切り開いてくださったおかげです。

――アンゴラ村長さんがnoteでオーディション番組『No No Girls』(ノノガ)のことに触れていたのを拝読しました。『ノノガ』があんなに盛り上がるという時代の変化と、アンゴラ村長さんの写真集に対する評価はリンクしているなと感じています。

アンゴラ:ちょうど今、時代が変わろうとしている時だったからよかったのかもしれません。私はCHIKAちゃん(『ノノガ』参加者で、現在は「HANA」のメンバー)の歌を聴いてる時に「歌声が素晴らしい」で100パーセント支配されてしまいました。でもCHIKAちゃんは容姿へのコンプレックスにずっと悩んでいたと。

CHIKAちゃんはデビューに際しての話なのでちょっと違うかもしれませんが、何をしていても関係なくても、まず最初に容姿の話を持ち出してくる人はいます。でもその面でしか人を判断できないのは、こんなにも色んな才能が見つけやすくなった時代にもったいなすぎます。

――わかります。CHIKAちゃんが歌う『美人』の叫びを聴いて何も思わない人がこの世にいる?って思いました。

アンゴラ:いないですよ。あれすごかったですよね!

――以前テレビで容姿いじりをされた時、アンゴラ村長さんが「白亜紀のお笑い」と返していたのも話題になりました。

アンゴラ:あの頃はテレビに出たら当たり前に容姿いじりをされていた感じでした。でも難しいですよね。

――人によってはよかれと思ってやる方もいる。

アンゴラ:そういうものだからやってるんだよという。でも影響力の大きなテレビで、初めて会ったぐらいの方から顔をいじられて、私がそれを受け入れてしまうことには怖さがありました。

そういうやりとりを見た人が会社や学校に「テレビでやってるから」ってそれを持ちこんで、新入社員とかに「お前メッチャ太ってんじゃん」って言ったとしたら、そんなの全然素敵じゃないじゃないですか。これはよくないよな、って。

――別に自分の中ではどうでもいいと思っていても、ここでちゃんとダメと言わないといけないっていうことあります。たとえ笑いのわからん女だと思われようとも。

アンゴラ:去年写真集を出して、その時にインタビューで“標準体型の権化”みたいな感じで答えたりしてたんですけど、たぶんそういうことに疎い芸人の先輩から「お前、太ったよな?」って言われたりして。「えっ、マジか。この権化の私に?」と思って。

――権化(笑)。

アンゴラ:「え、私が『みんなありのままで居ようね』みたいなこと言ってるの、知らないの?」って、ちょっとおこがましいですが思っちゃって。

でもその時「いや、標準体型ですよ、これが」って先輩に言った時に、唇が少し震えたんですよね。インタビューでは「そんなのあり得ないですよ!」って強く言えるんですけど、目の前で先輩に言われると「い、いや、標準体型ですよ」って、こう……。

――はい。

アンゴラ:……震えちゃうんですよね。震えてしまった。目の前の上司や家族に見た目のことを言われて苦しいってこういう感じなんだろうなって私はその時にすごく感じました。

今回のインタビューもそうですけど、私が正直に答えることで、世の中にもっと浸透していって、誰かが目の前の上司に震えながら「これが普通ですよ」って言わなくてもいいように。そんな上司にこの記事が届いてくれたらいいです。

――写真集を出したことでたぶん救われている女性はたくさん居ると思います。

アンゴラ:「かわいくなりたいと思った時にまずダイエットだって思っていたけど、このままで頑張ってみようかな」って言われることもありました。女性の方にも届いてるならよかったなって思います。

――全然7人じゃないです。

アンゴラ:ほんと。ビックリです。

――では2冊目を出そうと思った理由の一つに「まだ届いてないところもある」みたいな感覚もあったのでしょうか。

アンゴラ:そうですね。それもありましたし、夜のニュース番組で、プラスサイズモデルの方が出てインタビューに答えていたんですけど「こういう体型の素敵さを伝えていきたいと思った時に、風潮というのは一回でできるわけではなく、いろんな後押しがあって徐々にできあがっていくものみたいなのだ」と。

それを聞いて確かにって思いました。自分が写真集を出して、『No No Girls』が始まって、でもまだ先輩からは体型のことを言われて……少しずつなんですよね。あと、シンプルに紙の写真集が欲しいっていう声をいただいて。前回はデジタル配信のみだったので。じゃあ取れるお金は取っていきたいみたいな(笑)。

――大事です(笑)。1冊目と2冊目で感覚の違いはありましたか?

アンゴラ:やっぱり写真集とかグラビアってどれぐらい露出をしてるかみたいな、2冊目になるとそこも期待されると思います。前回よりちょっと頑張りましょうか、みたいなところはあったっちゃあったんですけど。

 でも普通にラーメン食べてるとか、お酒を飲んだりとか、猫と触れ合って楽しそうにしてるとか、女性に対して「かわいい」と思うポイントっていっぱいあると思うんですよ。スタイルやビジュアルだけじゃなくて。そういうのをもっと滲み出せるように頑張ったかなと思います。

――かわいさはもっといろいろある。

アンゴラ:そうです。無邪気さとか、笑顔とか、切なそうにしていたりとか。そういうの「芸人なのに」って自分でもちょっとツッコむところではあるんですけど、ここは「いや、私は女優だ」という気持ちで。好きな人と過ごしてる時の自然に見えるかわいさじゃないですけど、そんなところを私でも出せるようにしたかったです。

――周りの芸人さんの反応はいかがでしたか。

アンゴラ:ありがたいことに私の写真集が売れたことによって、女性芸人のみならず男性芸人も、どんどんみんな写真集を出させられています。みんなどんどん脱がされる状況になってきていて。空気階段の(鈴木)もぐらさんがタイムマシーン3号の関(太)さんと一緒に写真集出したり。

――そうでしたね。あの写真集も話題になりました。

アンゴラ:もぐらさんが「アンゴラ村長を目指します」ってコメントをしてくれてうれしかったです。

「芸人に新しい文化を持ち込みやがって」みたいに思われてるんじゃないかなって不安もあったんですけど、オダウエダの小田(結希)さんが「素敵だし、自分ができることは全部やったほうがいい」って言ってくれたんですよ。あと「ちゃんと新ネタを毎月作ってるんだから大丈夫」って。

――毎月新ネタってすごいです。

アンゴラ:自分の中でも、毎月3本ずつでもネタが増えていくっていうのが一個心のお守りになってます。「だって、別にネタ面白いし」って、そう言えるぐらい自信がついたんですよ。なので、そこでひるまなくなったかなって思います

――自分の中での軸がしっかりしているから、何か攻撃されても大丈夫。ワンカップにはいかない。

アンゴラ:ワンカップにはいかない。そうですね(笑)。

――今、ルッキズムに対しては、率直にどのようなお考えでいらっしゃいますか。

アンゴラ:私は生まれ持った顔で生きているだけなんですね。半年に1回SNSで「こいつは男に媚び売って、女友達が少なそうな顔だ」なんて叩かれても。

――そうですよ。『ノノガ』に登場したリリックを借りれば、「生まれ持った顔ポーカー」。

アンゴラ:そうですよ。生まれ持った顔ポーカーなのにそんなこと言われる筋合いないし、私は別に男に媚び売るために飲み歩いたりとかしてない。毎日こんなにパソコンに向かってネタ書いてるのに、とか思ったりしちゃうんですけど。

すごくいい意味で、こういう顔でこういう体型だからこそ今回の写真集を出せたというのがあって。私、ずっと持てるもので勝負してきたなって思うんですよ。

――それは具体的にどういうことでしょうか。

アンゴラ:たとえば、優しそうな雰囲気の私が急に笑顔でメチャメチャ罵倒したらそれはウケるんじゃないかとか。私のこういう雰囲気があるから、罵倒がギャップになってる。だったらそこからネタを作ってみようとか。やっぱり芸人だから、ネタを書くから、より自分が持ってるものを生かしてやっていこうという考え方があるんです。

オダウエダの植田(紫帆)さんがほぼ全裸で乳首だけ人の顔で隠して笑い取ってるの、私はメチャメチャかっこいいなって思う。でも私があれをやったらリアルすぎてウケない。植田さんは持ってるもので勝負してるんですよね。

――なるほど。

アンゴラ:人間は目で見たことが情報として入ってきちゃうので、そこの判断を全部ナシにしようというのは無理だと思うんですけど、だったらみんな持ってるもので戦えばいいと思っていて。

私はネタを作ってウケることが一番人生の中で幸せだなと思うけど、すごくかわいく写真に写ることが人生の中で一番っていう方も居る。そのためにメイクをがんばったり整形される方もいるし、それはもちろん素敵な人生だと思うので。だから、みんな持っているもので頑張ってるから、外から勝手に評価をしないという方向に行きつけばいいなとは思いますね。

参照元:Yahoo!ニュース