「飲んだら、泳がない」 足ふらつき判断力低下 “酔泳”の危険性

飲酒をイメージした写真

夏本番を迎え、海や川、プールなど水辺が恋しい季節だ。

猛暑だから当然、冷たい物が飲みたくなる。

だが、アルコールは禁物だ。

「飲んだら、泳がない。」。

そう注意を呼びかけている日本ライフセービング協会(JLA)によると、水辺の緊急搬送の約2割は飲酒をしていた事例という。

7月25日は世界溺水防止デー。

飲酒して泳ぐ“酔泳”の危険性について専門家に聞いた。

「アルコールを摂取すると、判断力が低下します。認知機能が落ちるので、危険な場所に入ってしまうなど、正確な判断ができなくなります。また、小脳の機能にも影響します。平衡感覚が失われ、足がふらつき、浅瀬でも溺れてしまうこともあります」

飲酒と溺水の関係について、そう指摘するのは君津中央病院(千葉県)副院長で、JLAメディカルダイレクターを務める北村伸哉医師(61)だ。

JLAによると、2024年に加盟クラブが活動した全国の海水浴場など215カ所で、救急搬送事例(心肺蘇生法実施例を除く)が報告されたのは41事例。

このうち飲酒をしていたのは22%にあたる9事例だった。

溺水による心肺停止と考えられるのは4事例で、このうち1事例が飲酒をして遊泳したケースで、後に死亡と報道された。

7月7日に福岡市の海水浴場で40代の男性が溺死した事故も、男性は飲酒状態だったとみられている。

海水浴場を抱える自治体はどう対応しているのか。

神奈川県逗子市は14年から条例で、逗子海岸の砂浜での飲酒を禁止した。

しかし、海の家での飲酒は認めている。

大音量の音楽を流しながら飲酒して騒ぐ、海の家の「クラブ化」が社会問題となり、安全な海水浴場にするために定められた条例で、溺水事故防止が第一の目的ではなかったという。

市の担当者は、海の家での飲酒を禁止しなかった理由について「海の家は店員が飲酒の量を管理できるため」と説明している。

条例では、砂浜での飲酒だけでなく、バーベキューやスピーカーで音を流すことなども禁止している。

原則3回以上注意を受けても違反行為をやめない利用者には退場を勧告する。

海の家に対しても「従業員が外の客に酒を運んでいる」などの違反行為について、注意書や違反確認書を出し、規定の枚数に達した場合は、営業停止などの処分をするとしている。

「目の前で子どもが溺れてしまった時に、大人がお酒を飲んでいたら助けられません。『飲んだら、泳がない。』。そう地道に呼びかけていきましょう。愛する家族のためにも」

北村医師は、病院では救急搬送患者や、ドクターヘリで出動する必要があるような重症者の治療に当たっている。

そんな多忙な日々の中、この夏も2回ほど、ライフセーバーとして活動する予定という。

参照元:Yahoo!ニュース