やっぱりシニアは投資より貯蓄か 高齢者限定の金利上乗せ預金が人気

お金をイメージした写真

〝金利のある世界〟が本格化する中、シニアを対象に預金金利を上乗せする動きが一部の銀行などで出ている。

政府が資産運用立国を掲げ、「貯蓄から投資」の旗振りをする中でも投資リスクを懸念するシニア層。

「投資より貯蓄」という、この層のニーズに応える形で人気となっている。

「わずか3カ月半で年間想定の4倍以上の口座開設の申し込みがあった」。

SBI新生銀行が3月から始めた、60歳以上を対象とした円普通預金の優遇金利商品「Bright(ブライト)60」。

リテール営業部の柴田直幸部長は反響の大きさを話す。

ブライト60の金利は年0.4%と、通常の大手銀行などの円普通預金の2倍だ。

60歳以上の顧客なら無料入会が可能で、金利以外にもATM(現金自動預払機)出金時の手数料が無料となるなどのメリットもある。

同行では、定年退職を迎える60歳前後の利用者から一定程度、口座の解約が出ていた。

そのような顧客をつなぎ留めつつ、逆に60歳以上の顧客にも新たに選択される銀行になれるかが課題となっていた。

柴田氏は「定年を機に複数の銀行口座を整理・集約する人は多い。そのときに選ばれる銀行にならないといけない」と強調する。

ブライト60では会員向けのプレゼントやセミナーなども開催。

株式投資などを希望する人にはグループの証券会社と連携して対応するとしている。

インターネット銀行のauじぶん銀行は4~5月、55歳以上で預け入れ金額100万円以上の顧客を対象にした「アクティブシニア円定期預金」の募集を行った。

5年物の金利を年1.05%と通常の定期預金の約2倍に設定したところ、申し込みが殺到。

最終的に目標金額の6倍の預金が集まった。

同行マーケティング第1部の伊東宏之個人預金グループリーダーは「元本割れしない円定期預金に対し、シニア層の強いニーズがあった」と手応えを語る。

同行では今回の反響を踏まえ、第2弾も検討する方向だ。

アクティブシニア円定期預金に3000万円を預け入れた会社員の男性(67)は「しばらく使わないお金だったし、条件が良かったので預けた」と明かす。

他の金融機関で投資信託なども保有しているが、預金額に比べれば少額という。

過去の投資で、リーマン・ショックに伴う株価急落で大きな損失を経験したこともあり、「このくらいの年齢になると資産を(運用して)増やすよりも減らしたくない気持ちが大きい」と話す。

地方銀行の島根銀行やネット銀行のイオン銀行などでも、退職金の預け入れや年金受取口座に指定することなどを条件に、シニア限定で店頭金利に上乗せした預金商品をアピールしている。

〝金利のある世界〟では企業向け貸し出しや個人向けの住宅ローンなどで利ざやを稼ぐことが可能となり、銀行側にとっても原資となる預金を集める必要性が強まっている。

退職金などまとまった資産を持つシニア層に対し、限定の上乗せ金利で預金をしてもらうようにアピールを図る動きはしばらく続きそうだ。

シニア層のお金のやりくりの留意点について、千葉商科大特任教授でファイナンシャル・プランナーの竹下さくらさんに聞いた。

「お金のやりくりは生活費など『日々の生活に必要なお金』、住宅のリフォーム費用など『近く使い道が決まっているお金』、『当面使う予定がないお金』の3つを明確に分けることが基本だ。今後のライフプランを立て、お金をどう使うかをしっかり考え、明確にすることが重要だ。シニア層は、預貯金の金利が高かった時代を知っている。元本割れのリスクを回避するため、銀行のキャンペーンなど高い預金金利に目がいきがちだ。ただ、高金利といっても適用期間は3カ月や1年などの短期が大半だ。それだけで必要な老後資産を増やしていくのは難しい。年を取れば、運用をやめて、増やした資産を取り崩しながら生活する時期が必ず出てくる。高い預金金利を渡り歩いてきた人は資産の目減りに慣れておらず、精神的に追い詰められる人もいる。金利ばかりでなく、老後の過ごし方や必要な金額などを調べ、終盤に向けてのイメージを持つことが大事だ」

参照元:Yahoo!ニュース