コカ・コーラ甘味料変更の高いハードル、コスト増加 農家に打撃

トランプ米大統領は16日、米飲料大手コカ・コーラが米国内の飲料の甘味料としてトウモロコシ由来のシロップではなくサトウキビ糖を使用することに同意したと述べた。
しかし実現にはさまざまな課題がある。
飲料メーカーは供給網の再構築を迫られコストが増える。
米国内農家はトウモロコシ価格の下落で打撃を被る。
「トランプ関税」も逆風だ。
コカ・コーラは既にメキシコなどの海外市場でサトウキビ糖を使ったコーラを販売しており、米国内の一部スーパーでも「メキシカン・コーク」という製品名でサトウキビ糖入りコーラを販売している。
トランプ氏の発表に対してコカ・コーラは「革新的な新商品についての詳細を近日中に発表する」とコメント。
ペプシコも17日、消費者が望むのであれば製品に砂糖を使用すると表明した。
しかし業界アナリストによると、コーンシロップと砂糖は生産者が異なるため、米国で販売されている他のコーラや飲料、菓子類の甘味料の変更には供給網の大規模な再構築が必要だ。
また製品のラベル表示も変えなければならず、コストは増すという。
米調査会社SOSランド・パブリッシングの上級編集者ロン・スターク氏は「そもそも食品・飲料業界が米国でコーンシロップを使い始めたのは砂糖よりもコストが安いためだ」と話す。
飲料業界では55%高果糖コーンシロップ(HFCS55)が、製パン業界では42%HFCSが使われているという。
米トウモロコシ精製業者協会(CRA)によると、米国の食品・飲料業界から高果糖コーンシロップが完全に排除された場合、トウモロコシ価格は1ブッシェルあたり最大0.34ドル下落し、農家の収入は51億ドル減少する可能性がある。
「その経済的ショックによって、地方で雇用が失われ、全米の地域社会に重大な経済的影響をもたらす」とCRAは警告した。
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)やイングレディオンといった高果糖コーンシロップ製造最大手は、中西部の農業地帯に点在する工場でトウモロコシを粉砕し、コーンシロップやバイオ燃料のエタノールなどを生産している。
ヘザー・ジョーンズ・リサーチのアナリストのヘザー・ジョーンズ氏によると、ADMは毎年40億-45億ポンドの高果糖コーンシロップを出荷。
これは2026年の予想利益の約6─7%に相当する。
ジョーンズ氏は調査メモで「もしコカ・コーラがHFCS55の使用を全てサトウキビ糖に切り替えれば、今の価格差や今後予想されるサトウキビ糖の大幅な価格上昇を考慮すると、10億ドルを超えるコスト増になる」と試算した。
高果糖コーンシロップ1ポンド当たりの生産には約2.5ポンドのトウモロコシが必要。
そのため米国におけるコーンシロップ消費の大幅な減少が穀物需要に悪影響を及ぼし、トウモロコシ生産者が苦境に陥りかねない。
一方、サトウキビ糖は米国内の生産だけで甘味料の需要をまかないきれないため、輸入が増加する可能性がある。
米政府統計によると、飲料や他の食品用のコーンシロップを生産するために使われるトウモロコシは年間約4億ブッシェルで、国内生産の約2.5%に相当する。
コーンシロップの年間生産量は約730万トンだ。
一方、米国のサトウキビ糖の年間生産量は約360万トン。
その半分がトランプ氏の地元であるフロリダ州で生産されている。
糖類アナリストのマイケル・マクドゥーガル氏は、トランプ氏が仕掛ける貿易戦争の影響で、米国内の砂糖供給不足を補うのは難しいと指摘。
「最も可能性があるのはブラジルからの輸入だが、トランプ氏は最近、ブラジルに対して50%の関税を課すと表明したばかりだ」と指摘した。
またCILマネジメント・コンサルタンツのパートナー、ジェームズ・マクドネル氏によると、飲料メーカーは甘味料原料の変更に追加投資が必要だが、ボトラー(瓶詰業者)がそのコストを負担するとは考えにくく、消費者も製品の値上げに反発する公算が大きいという。
参照元:REUTERS(ロイター)