昆虫採取で摘発も 中国反スパイ法、定義あいまい 高める不安感

中国・北京市で拘束され、スパイ罪で起訴されたアステラス製薬の60代の日本人男性社員に対し、同市の第2中級人民法院(地裁)は16日、懲役3年6月の有罪判決を言い渡した。
ただ何が問題とされたのかは具体的に明らかにされていない。
中国の反スパイ法を巡る問題では、「スパイ罪」の適用範囲が広く不明確なうえ、司法手続きが不透明なことが在中邦人の不安感を高める。
在中国日本大使館が作成した「安全の手引き」は、中国国家安全部の過去の発表内容などから実際にスパイ行為として摘発された事例を紹介し、注意を呼びかけている。
「手引き」によると、出会い系アプリで知り合った女性からの依頼で中国軍艦の停泊地や出港の様子を撮影したり、軍用飛行場の施設や戦闘機の配置などを撮影してインターネット上で公開したりするといったケースがあったという。
また、自然保護区内で外国機関の指示を受けた外国人が、野生植物や種を採取して海外に輸送したケースや、観光名目で区内に複数回にわたって立ち入り、大量の昆虫を採取して国外に持ち出した例も挙げられている。
さらに学術目的でのアンケート調査が統計法違反とされる可能性や、GPSを用いた測量や温泉掘削などの目的での地質調査、地理情報の収集も「国家安全に危害を及ぼす」と判断されるおそれがあるという。
中国は2023年の反スパイ法改正で、従来の「国家機密」に加え、「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品」の提供や窃取などにも処罰対象を拡大した。
だが定義があいまいで、当局による恣意(しい)的な運用のリスクが懸念されている。
参照元:Yahoo!ニュース