「虚偽の自白を誘導」再審無罪の元看護助手 大津地裁「担当警察官の捜査は違法」と認定 県に3100万円賠償命じる

22年前に滋賀県東近江市の病院で、入院患者を殺害した罪で服役した後、やり直しの裁判(再審)で無罪となった女性が、国と県に捜査の違法性などを訴え損害賠償を求めている裁判で、大津地裁は17日、県に対して約3100万の支払いを命じた。
判決で大津地裁は、「虚偽の自白をするよう誘導したり、自発的に発言したように調書を作成したりするなど、担当警察官の取り調べは違法な捜査と認められる」と指摘した。
一方、国への賠償請求については棄却され、女性は「穏便な生活を送りたいと思っていたが、最後まで闘い続けたい」と話し、控訴する意向を示した。
滋賀県東近江市の湖東記念病院で看護助手だった西山美香さん(45)は、入院患者の男性(当時72歳)の人工呼吸器を引き抜き殺害した罪で有罪となり、懲役12年の罪が確定し、2017年に刑期を終えて出所するまで身体拘束は約13年間に及んだ。
その後、男性患者が自然死した可能性があるという医師の意見書をもとに、西山さんのやり直しの裁判が始まり、5年前に無罪が確定。
西山さんは無実の罪で不当に拘束され、精神的苦痛を受けたとして、国と滋賀県に対し約5500万円の損害賠償を求めていた。
西山さんが逮捕・起訴され、有罪が確定した決め手となったのは、西山さんの「患者の呼吸器を外した」という『ウソの自白』だった。
西山さんには軽度の知的障害があり、やり直しの裁判では、当時取り調べを担当していた男性警察官が、西山さんの恋愛感情を利用して虚偽の自白に誘導したなどと認定されている。
裁判には取り調べを担当した警察官が出廷し、西山さんへの誘導や指示については「記憶にない」「原告のペースで取り調べていた」などと完全否定。
国と県は、捜査に違法性はなかったとして訴えを退けるよう求めていた。
一方、西山さん側は、「軽度の知的障害という特性や恋愛感情を利用して虚偽の自白を誘導した」「特定の文書を開示せず証拠隠しだ」などと主張していた。
17日の判決で大津地裁は、警察官の取り調べについて、「虚偽の自白をするよう誘導したり、自発的に発言したように調書を作成したりするなど、担当警察官の取り調べは社会通念上相当と認められる範囲を超えて違法」と指摘し、一部の供述調書が送致されなかったことにより「適切な判決を受けられなくなった」として、警察の捜査が違法だと認定した。
一方で、西山さんを起訴したことについて、「当時の証拠に照らして(検察官が)起訴の判断をしたことは、相応の合理性がある」として、国への請求は退けられた。
判決後、西山さんは会見で、「(国にも県にも)両方勝って、穏便な生活を送りたいと思っていた。不当な取り調べが違法だと言ってくれたのはうれしかった、国が起訴した違法性が認められなかったのが悔しかった。控訴すると決めたので、最後まで闘い続けたいと思う」と語り、弁護団も控訴する意向を示した。
一方、滋賀県は「判決内容を精査した上で、今後の対応を検討したい」とコメントしている。
参照元:Yahoo!ニュース