広島の「ウサギの島」で餌やりは? 実は外来種で生態系に懸念、共生に苦慮

人が近づくと耳を揺らしてウサギが駆け寄ってくる―。
「ウサギの島」として知られる広島県竹原市の大久野島には餌やりなどの触れ合いを求め、国内外から多くの観光客が訪れる。
地元の重要な観光資源になっているが、実は国外から持ち込まれた外来生物で、対策の必要性が高い「重点対策外来種」に指定されている。
餌やりも生態系に悪影響を及ぼす懸念があり、関係者は共生の在り方に苦慮している。
「かわいいウサギがたくさん見られて幸せ」。
観光で訪れた福岡市の50代女性は顔をほころばせた。
竹原市によると、島には約600匹のウサギがおり、2023年は外国人観光客を含む約20万人が訪れた。
ただ関係者は「手放しで喜べる状況ではない」と漏らす。
大久野島は瀬戸内海国立公園の一部。
所管する環境省によると、ウサギは欧州西部のイベリア半島などが原産のアナウサギを家畜化したカイウサギで、1970年代に島外から持ち込まれ野生化したと言われている。
餌付けは過剰繁殖や感染症のまん延、食べ残しによりイノシシなど有害獣が増える懸念があり、本来望ましくないとの立場だ。
野生生物への餌やりは「鹿せんべい」が許容される奈良公園(奈良市)のシカが例外で、公園のハトや野良猫を含め自治体が控えるよう呼びかける場合が多い。
一方、島内の宿泊施設「休暇村大久野島」によると、訪問客の9割以上はウサギ目当てという。
竹原市も重要な観光資源と位置付けており、島内で餌は売っていないものの、多くの人が望む餌やりは事実上の「黙認」状態だ。
観光と自然保護のジレンマの中、環境省や広島県、竹原市などは勉強会を重ねた後、2021年に「大久野島未来づくり実行委員会」を立ち上げ、対策に乗り出した。
取りまとめたルールは大きく分けて4項目ある。
(1)触らない。手から直接餌をあげない。
(2)道路上で餌をあげない。足元のウサギに注意。
(3)食べ終わるまで見守る。食べ残しは持ち帰る。
(4)ペット(生き物)を連れてこない。ウサギを持ち出さない。
ポスターやインターネットなどを通じて周知し、環境省の担当者は「徐々に浸透してきた」と手応えを語る。
ただ、こうした中で昨年から今年1月にかけて約100匹のウサギが骨折するなどして死んでいるのが見つかった。
島の遊歩道で蹴っている男を写真家の男性が取り押さえ、動物愛護法違反の疑いで逮捕されたが、人に慣れ過ぎた距離感と、管理者がいない野生生物ゆえのリスクを浮き彫りにした。
関係者は見回りの強化などを進めているが、人とウサギの新たな関係の在り方の模索を迫られている。
参照元:Yahoo!ニュース