マインクラフト、国土交通省の出先機関が続々活用 〝リアル〟土木プロの測量、土木職ならではの完成度

マインクラフトをイメージした写真

世界的な人気ゲーム、マインクラフトに、国土交通省の河川事務所などの出先機関が続々と「参戦」している。

現実社会で土木工事を専門とする職員が腕を振るった作品もあり、SNSで話題を集めている。

「国土交通省」と「ゲーム」という一見相いれないようなコラボが続く背景にはどのような思いがあるのだろうか。

マインクラフトは、3Dの仮想空間「ワールド」の中で、さまざまな立体ブロックを組み合わせて、自分の好みの空間をつくり、遊べるゲームだ。

関東地方整備局江戸川河川事務所が4月、マインクラフトで首都圏外郭放水路を再現し、話題を集めたが、実は江戸川河川事務所以外の国土交通省の地方整備局の事務所も次々とマインクラフトに「参戦」していて、国営公園などのワールドデータを公開している。

四国地方整備局(高松市)は、日本最大のかんがい用ため池「満濃池」のほとりにある四国唯一の国営公園・国営讃岐まんのう公園(香川県まんのう町)の一部をバーチャルで再現した。

国営公園の再現は全国初の事例だった。

スマートフォンに搭載されているLiDARスキャナー(3D計測ができる高精度なレーザー測量装置)で取得した3次元点群データ(3次元の座標情報をもった点の集まり)を、マインクラフトのブロックデータに変換。

ゲーム内で公園内の芝生広場や滝を表現した。

一瞬、ドローンで撮影した映像と見間違えるほど壮大でリアルな造形だ。

測量中の様子を紹介したx(旧twitter)の投稿は100万回表示された。

企画した香川河川国道事務所の担当者によると、制作したのは土木系技術職の職員で、建設業のデジタル化に関する部署に所属していたこともあるそうだ。

LiDARスキャナーで取得したデータを点群処理ソフトで調整する知識と作業などは本職の腕が生かされたという。

担当者は、「近年、建設業の担い手が不足しており、将来の担い手である若い世代に建設技術に興味・関心を持ってもらうため企画しました。国土交通省が進めるi―Construction(ICTの活用による建設現場の生産性向上)やインフラDXへの理解、国営公園の利用促進につながることを期待しています」と話している。

関東地方整備局の荒川調節池工事事務所(さいたま市)も、荒川第二・三調節池のワールドデータを作成し、公開している。

荒川第二・三調節池は、埼玉県南部と東京都区間の荒川流域を洪水から守ることを目的にした施設で、埼玉県のさいたま市・川越市・上尾市にまたがり、令和12年度の完成を目指して整備を進めている。

面積は二つ合わせて約760ヘクタール、治水容量約5100万立方メートルという巨大な施設だ。

マインクラフトに着目した理由を担当者に尋ねた。

事務所でBIM/CIM モデル(3 次元データ)を作成・活用し事業を推進しており、ワールドデータの作成のベースとなる3次元データを持っていたこと。

マインクラフトが自由な創造性から幅広い年齢層に人気のゲームであること。

特に、小学校などでプログラミングの学習教材として活用されるなど、これからの世代が興味をいだくリソースであること。

様々な要因から、マインクラフトの活用を決めたといいう。

工事事務所では、土木系技術職を中心に、一部システム系エンジニアの手も借りながらデータ作成を行った。

事務所職員だけではデータ変換ができないので一部は業務委託したという。

マインクラフトには安山岩や黒曜石など、「ブロック」と呼ばれる素材がある。

そのブロックにもこだわりがあると担当者は語る。

「土木構造物を作成するにあたっては、現実の構造物に用いられる材料に近いブロックを使用するように心がけました。どの構造物にどのブロックを用いるのが適しているか考える部分は、土木系技術職の知識が生きた点かもしれません」

地下構造物までマイクラデータ化するなど、土木職ならではの視点が生かされている。

工事事務所は、さらなるブラッシュアップで完成度を高めていきたいという。

「ワールドデータによって、完成形がイメージできるなどご好評の声や関心を持っていただいているのでうれしく感じています。今回は3次元データから形の再現にとどまっているので、今後、出水時の水の動きなどを表現し、洪水調節効果などの見える化を図りたいと考えています」

参照元:Yahoo!ニュース