2mgで致死量「フェンタニル」中毒者だらけの“ゾンビタウン”とは?在米日本人「処方された薬に入ってる」「警察は見て見ぬフリ」

医療をイメージした写真

中毒者の動きを止め、生きる屍のようにしてしまう“ゾンビドラッグ”とも呼ばれる合成麻薬「フェンタニル」の脅威が日本に迫っていると懸念が高まっている。

きっかけは日本経済新聞による報道で、フェンタニルをアメリカに密輸する中国の組織が名古屋に拠点を作っていた疑いが判明、少なくとも2024年7月まで日本から危険薬物の集配送や資金管理を指示していた可能性が浮上したという。

フェンタニルはヘロインの50倍、モルヒネの100倍の強さがあると言われ、アメリカでは多い年で8万人が過剰摂取で死亡するなど深刻な問題にもなっている。

「ABEMA Prime」では事情に詳しい専門家、さらに知人をフェンタニル中毒で亡くしたアメリカ在住者に現状を聞き取り、どこまでその脅威が迫っているのかを検討した。

フェンタニルは「オピオイド」と呼ばれる麻薬性鎮静剤の一種。

通常は慢性的、もしくは術後の強い痛みに対する治療に使用される。

作用としては多幸感、痛みの緩和、リラックス、鎮静、混乱、眠気、めまい、吐き気、嘔吐、尿閉、瞳孔収縮などがあり、過剰摂取すると昏睡、呼吸不全による死亡、チアノーゼなどがある。

わずか2mgでも致死量となる可能性があるだけに、いかに強力であるかがわかる。

2016年に亡くなった人気歌手・プリンスさんも、フェンタニルの過剰摂取で亡くなった。

薬物の依存症に詳しい科学ジャーナリストの石田雅彦氏は「少量で効果があり安いために蔓延している。フェンタニルの効果を上げるためにキシラジンという別の物質と合体させてもいるが、そのキシラジンは体中の組織を壊死させるために、体が動かなくなってゾンビみたいになってしまう」と説明した。

ロサンゼルス在住の実業家・音楽プロデューサーのDJ 2HIGH氏は、多くの知人をフェンタニルによって亡くした。

「自分の家から車で5分くらいのところに、ゾンビタウンがある。大きな公園に本当にとんでもない数の中毒者がいるが、警察は見て見ぬふりだ」と、野放し状態になっているという。

自ら望んでフェンタニルを手に入れる人ももちろんいるが、さらに深刻なのは本人が知らない間に摂取してしまっているケースだ。

DJ 2HIGH氏は「医者から処方される薬が偽物で、その中にフェンタニルが入っていることがある。知らずに入っているところが一番の脅威だと思う」とし、この理由について石田氏は「1990年代に製薬会社がオピオイド鎮痛剤は依存性がない、中毒性が低いとPRして広めた。それに対しては今でもアメリカ内で訴訟が起きているほどだ。真に受けた医者が気軽に処方して、あっという間にオピオイドの依存症が増えてしまった。オピオイドが規制され入手が厳しくなったことで、少量でもいろいろなものに混ぜられるフェンタニルが広がった。フェンタニル自体は原材料があればものすごく簡単に作れる」と説明した。

アメリカ・トランプ大統領は、中国がフェンタニル原料がアメリカに流入することを抑制できていないとして、今年2〜3月に20%の関税賦課を実施した。

これに中国は「根本はアメリカの問題で中国は強力な措置を取ってきた。恩を仇で返すやり方だ」と反発。

先月20日に中国がフェンタニル原料を規制対象に追加したことで、フェンタニル関税の撤廃に期待しているが、このように国際問題にまで発展するほど事態は深刻だ。

では名古屋に一時期、拠点があったと報道された中、日本国内での影響はどこまであるのか。

まず名古屋に拠点があったという報道について石田氏は「日本に薬物や原材料が荷揚げされるようなことはなく、日本経由という体にしてスルーした、踏み台にしたのではないか」と分析する。

また日本における管理体制はかなり厳重だとも述べた。

「フェンタニルが日本の税関で最初に押収されたのは2005年で、今から20年前のことだ。チェック体制は厳しくなっているし、原材料も規制薬物のリストに全部載せていて、見つかった時点ですぐ取り締まっている。なかなか日本の中で広まらないのは、薬局や医者のチェックが厳しいこともあるが、税関など水際でしっかり食い止めているのではないか」。

ただしフェンタニルにも種類があり、その特定も難しくなっていると指摘する。

「フェンタニルにも今、20種類以上の亜種がある。イタチごっこになっていて、規制薬物だとピンポイントに判別するのが難しい」。

ただし今の日本においては、しっかりと規制ができている状態だとも語る。

「原料さえあれば簡単に作れてしまうので、それは絶対に避けなくてはいけないが、日本の規制当局はその原材料も強く規制しているから、原材料さえなければ気軽に作れないと思う」。

またSNS上では、街中でゾンビ状態になっている中毒者の動画が出回っているが、そのような映像も注意喚起につながっているとも述べる。

「非常に怖い映像を見ることもあるが『怖がらせる』のは重要だと思う。大麻は毒性や依存性が低いというような間違った情報が入ってきているが、今怖がらせておけばフェンタニルはあまり広がらないのではないか」。

参照元:Yahoo!ニュース