「賃金100万円増」「最低賃金1500円以上」賃上げ目標競う各党 「実質プラス」の実現カギ

賃金アップをイメージした写真

「賃金100万円増」「最低賃金1500円以上」――。

参院選で各党は、賃上げに向けた高い目標を公約に並べた。

政府主導の「官製賃上げ」と呼ばれて久しいが、2024年まで実質賃金は3年連続でマイナスが続いている。

国民生活に直結するテーマで、各党が選挙前のかけ声だけでなく、実現に向けた道筋を示せるかどうかに有権者は目を凝らしている。

「食品は値上げされ、塾代など子どもの教育費用もかさむ。生活が苦しい中、購入を迷ってしまう」

4日午後、東京都千代田区のビックカメラ有楽町店では、酷暑をしのぐため多くの買い物客が品定めしていたエアコン売り場で、東京都調布市の男性会社員(41)がため息をついた。

男性は、春の基本給底上げ(ベースアップ=ベア)はわずかで、夏のボーナスは横ばいだった。

給料の額面は増えたが、「社会保険料の負担が大きい。使えるお金は減っている」と話し、賃上げ政策で投票先を決める考えを明かした。

連合が3日発表した2025年春闘の平均賃上げ率は前年同期より0.15ポイント高い5.25%で1991年以来、34年ぶりの高水準だった。

しかし物価は上がり続け、5月の全国消費者物価指数は、値動きが大きい生鮮食品を除いて前年同月比3.7%上昇。

3年9か月連続で前年を上回った。

物価高に賃上げが追いつかず、厚生労働省の毎月勤労統計によると、物価の変動を反映した労働者1人あたりの実質賃金は、2024年まで対前年で3年連続のマイナスとなった。

2000年以降、プラスになったのは6回だけだ。

自民党は「30年度に賃金約100万円増、40年までに平均所得の5割以上アップを目指す」との公約を掲げた。

石破首相(自民党総裁)は4日午前、福島県白河市で演説し、「私たちは賃上げが大事だと思っている。物価上昇を上回る賃金上昇を」と訴えた。

物価高対策で野党が消費税減税を訴える中、政府は「減税より賃上げこそが成長戦略の要」と強調する。

与党は民間に賃上げを促すため、公共事業の発注価格引き上げなどを受け入れる方針だ。

一方で、野党も賃上げを前面に掲げ、「企業利益を真っ先に賃上げへ」(立憲民主党)、「手取りを増やす夏」(国民民主党)とのキャッチフレーズでアピールする。

立民は、最低賃金(時給)を全国で早期に1500円以上に引き上げると公約に盛り込み、共産党は1700円を目指すとした。

国民民主は、実質賃金が持続的にプラスになるまで、消費税を一律5%に引き下げるとの政策を打ち出し、「国の懐より国民の懐を豊かにする」と訴える。

ただ賃上げには、日本経済を成長軌道に乗せ、企業の稼ぐ力を高める施策が不可欠だ。

選挙戦で各党には、中長期的な成長戦略を巡る議論が求められる。

参照元:Yahoo!ニュース